香川県から徳島県にかけての地域を走る観光列車「四国まんなか千年ものがたり」は、JR四国が運行している「ものがたり」列車の一つです。
日本三大秘境である徳島県祖谷地方へのアクセスに適していることはもちろん、この列車に乗車するだけでも「ものがたり」列車ならではの魅力を十分に満喫できます。
「ものがたり」列車のサービスについては「Cool Japan Award 2025」にも選定されるほど定評があり、外国人観光客にも人気があることが分かります。
列車の定員数が少ないため、予約の取りにくさが壁になっているものの、実際に乗車すれば至極の空間で上質な食事を体験できることは間違いありません。
そこで、この列車の指定券を取り、食事の手配を行って、多度津駅ゆき上り列車「しあわせの郷紀行」に乗車してみました。車内設備ばかりではなく、アテンダントによる質の高いサービスは、日本国内の観光列車の中でもトップクラスの秀逸さです。

事前予約制の食事内容は非常に上質で、食事をとればこの列車の真髄を体験できます。代金が6,000円と値が張りますが、一度試してみてはいかがでしょうか。車内でも軽食やドリンクを予約なしに注文できるので、あわせて検討したいです。
この記事では、JR四国が運行する観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の車内設備の探訪や、事前予約制の食事のうち「おとなの遊山箱」をいただいた体験に焦点を当てて、サービス面を写真でご紹介します。
当記事を通して、この列車でどのようなサービスが期待できるかを思い描いていただければ幸いです。
- 車内で提供される食事は事前予約制であり、当日の注文は不可能なこと
- 軽食やデザート、ドリンクについては、車内で当日予約なしに注文できること
- 食事を予約した乗客に対しては琴平駅専用待合室でデザートの提供があること
「四国まんなか千年ものがたり」のきっぷを手にするまで~指定席の確保に苦心~

JR四国が運行する観光列車「四国まんなか千年ものがたり」は、瀬戸内海にほど近い多度津駅から金刀比羅宮の最寄りの琴平駅を経由し、祖谷渓(いやけい)への入口である大歩危駅までの区間を結びます。
この列車は土休日や祝日を中心に運行され、下り列車「そらの郷紀行」と上り列車「しあわせの郷紀行」が多度津駅・大歩危駅間を往復します。
「四国まんなか千年ものがたり」は多客臨時列車であり、指定券を手にすれば誰でも乗車できます。ただし、この列車の乗車定員がわずか57名である上、外国人観光客にも人気が高いため、指定券の確保が困難です。
この列車への乗車を含む旅程全体によって、適したきっぷの組み合わせが異なります。基本的には普通乗車券と特急券・グリーン券を購入すれば乗車できますが、事前予約制の食事を楽しむにはあらかじめ食事予約券を購入することが必要です。
また、この列車の指定券は対面販売が原則であり、ネット予約サービスからは購入できません。このような背景があるため、個人できっぷを揃えるハードルが高いのです。
「四国まんなか千年ものがたり」の指定券や食事予約券を自分でいかに確実に押さえるか、その極意を別の記事にまとめました。予約を急いでいる方は、是非ご一読ください。

それでは、「四国まんなか千年ものがたり」が出発する大歩危駅の様子や車両のエクステリア・インテリアを写真で見ていきましょう!
大歩危駅にて列車を待つ
大歩危駅発多度津駅ゆきの上り列車「四国まんなか千年ものがたり」は「しあわせの郷紀行」と呼ばれています。当日は、大歩危駅から「しあわせの郷紀行」に乗車しました。
高知駅から特急「南風」号に乗車し、大歩危駅に入ったのは、13時05分でした。

大歩危駅は小さな駅で、現在は無人駅です(ただし、駅員が阿波池田駅から臨時で派遣されることがあるようで、当日は安全確認をしていました)。

ホーム上には、祖谷渓の象徴である「祖谷のかずら橋」のレプリカがありました。土讃線が走っていても、ここは秘境なのだなと実感します。

ホームの待合スペースには「らぶらぶベンチ」が。JR他社ではまず見られないようなJR四国の独特な世界観が、この標示から伝わってきます。

大歩危駅の駅舎。日本の古民家のようです。

駅舎から外を見ると、急勾配の道路がいきなり延びていて、その秘境感に圧倒されます。

駅舎は小さく、待合スペースも狭いです。「四国まんなか千年ものがたり」の乗客が集まると、非常に混雑します。

駅構内から見た大歩危駅の駅舎。特急停車駅とは思えないこじんまりした佇まいです。

駅舎の入口には、JR四国の駅長帽をかぶった児啼爺(こなきじじい)が。言語化が困難なほどの不思議な光景ですが、実は三好市(旧山城町)は児啼爺の発祥の地とされています。
「四国まんなか千年ものがたり」の車両探訪
観光列車「四国まんなか千年ものがたり」は、全車グリーン車の特急列車です。グリーン車に見合った車両の設備を詳しくご紹介します。
エクステリア(車外のデザイン)
大歩危駅の2番線ホームにはすでに「四国まんなか千年ものがたり」の車両が止まっていて、エクステリアを確認できる状態でした。

先頭の赤い車両が3号車「秋彩の章」、中央の青色の車両が2号車「夏清の章・冬清の章」、そして最後尾の緑色の車両が1号車「春萌の章」です。
1号車「春萌の章」

1号車「春萌の章」の外装は、春の芽吹きをイメージできる若草色です。

1号車の出入口には、列車のシンボルである大樹がデザインされています。

1号車のみに行先標があり、列車名が表示されています。
2号車「夏清の章・冬清の章」

2号車「夏清の章・冬清の章」の冬側の外装色は、雪をイメージした白色です。

反対側の外装は、夏をイメージした青色です。列車のシンボルマークが大胆に描かれています。

実際には出入りできませんが、2号車の出入口部分からは車内が見通せる造りです。
3号車「秋彩の章」

3号車「秋彩の章」の外装は、紅葉をイメージした深い赤色です。他の車両に比べ、最も鮮やかな配色です。

3号車の出入口にも、シンボルの大樹が描かれています。
インテリア(車内の様子)
アテンダントによる車内の準備が完了し、14時ちょうどに車内に入ることができました。この日はほぼ満席で、多くの乗客が車内に入っていきました。
1号車「春萌の章」
3号車と同様、1号車「春萌の章」も全体が客室です。インテリアは、明るい緑色がベースです。

座席のレイアウトは3号車と全く同じで、4人掛けのボックスシートと2人掛けのボックスシートが互い違いにアレンジされています。

1号車の運転席脇にはスタンプ台が置かれていて、記念乗車証にスタンプを押して持ち帰ることが可能です。
2号車「夏清の章・冬清の章」
2号車「夏清の章・冬清の章」のインテリアは古民家がイメージされていて、白色のソファーベンチが目立ちます。

1号車寄りには、物販カウンターとアテンダントが執務するバックスペースが配置されています。カウンター寄りの3席分(3番ABC)はバリアフリー対応の座席として発売されており、空席のことが多いようです。この日は、テーブルに物販サンプルが置かれていました。

カウンター側から車内を眺めた様子。最大で11名が並んで座るレイアウトです。5名以上のグループには特に適している一方、1人で乗るのは肩身が狭そうです。相席が前提なので、嫌ならば他の車両を選んだ方がよいかもしれません。

2号車のデッキです。明るい位置に洗面台が配置されています。
3号車「秋彩の章」
3号車「秋彩の章」は全体が客室で、インテリアは赤色がベースです。

4人掛けのボックスシートと2人掛けのボックスシートは互い違いにアレンジされていて、空間が広く保たれています。空いたスペースにはスーツケースがいくつも置けると同時に、アテンダントの給仕スペースにもなっています。

運転席寄りには、カウンターシートが配置されています。すべて1人掛けの座席なので、一人旅であっても躊躇なく予約できます。

これは、筆者が利用した2人掛けボックスシートです。シートピッチと窓枠の間隔が一致していて、窓枠が邪魔になることがありません。座席が動かせないため、大柄の人は座るのが大変かもしれません。電源コンセントやUSB充電ポートは設置されていません。モバイルバッテリーを持参すると無難です。
四国まんなか千年ものがたり「しあわせの郷紀行」の食事
観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の目玉は、車内で提供される事前予約制の食事です。下り列車ではさぬきの洋風料理が提供され、上り列車では和食が提供されます。
ここでは、上り列車「しあわせの郷紀行」で提供される食事「おとなの遊山箱」をご紹介します。
事前予約制の食事「おとなの遊山箱」
「しあわせの郷紀行」で提供されるのは、和食タイプの「おとなの遊山箱」です。当日車内で注文することは不可能で、発売箇所ごとに定められた手仕舞(手配受付終了日)の前に食事予約券を購入しておく必要があります。
食事予約券を購入するためには、指定券に記載された席番が必要です。事前に確認しましょう。

手仕舞が最も遅いのが、JR西日本のウェブサービス「tabiwa by WESTER」です。乗車日の4日前まで食事予約券の購入が可能なので、自分で手配するのであれば最も使い勝手が良いでしょう。

列車に乗車したら、デジタルチケットを使用開始します。するとデジタルチケットが表示されるので、アテンダントに提示します。

これは、おとなの遊山箱の冬季バージョン「冬の遊山」のメニューです。遊山箱は3段重ねの弁当箱で、一の重・二の重・三の重にそれぞれ料理が盛られており、それ以外に椀物が提供される形です。

実際に提供された「おとなの遊山箱」です。「遊山箱」とは、徳島県において江戸時代から伝わる弁当箱のことで、レジャーに出かける際の弁当箱として使われたとのこと。この遊山箱は「四国まんなか千年ものがたり」オリジナルで、仕切り板に列車のシンボルマークがあしらわれています。

仕切り板を外すと、三段重が中に収まっていることが分かります。これを自分で引き出します。アテンダントが出し方を教えてくれるので、ご心配なく。

箱の裏には指を通せる穴があり、重を押し出せる格好です。

三段重に盛られたメインディッシュは、少し量が少なめです。この他に、椀物の祖谷そばが付きます。

食事が終わると、デザートとしてホットコーヒーと和菓子が提供されます。全体的に分量が控えめであるため、6千円という料金が人によっては高く感じられるかもしれません。
当日車内で注文可能な軽食・ドリンク
この列車の指定券を購入した際に案内されるはずですが、「四国まんなか千年ものがたり」においては水やお茶を除き、飲食物の持ち込みは禁止です。

各テーブルには、軽食やドリンクのメニューが記載された「旅のしおり」が置かれており、当日注文して消費するスタイルです。メニューは定期的に入れ替わります(ウェブサイトからも情報を取得可能)。
ドリンクとして、ビールや地酒を含むアルコール、ソフトドリンク各種を注文できます。緑茶とミネラルウォーターは150円なので、車内で購入してもリーズナブルです。
軽食としてはフィッシュバーガーやサラダを添えた焼き豚などのおつまみ、ケーキやアイスといったデザートを注文できます。
その他に、事前に手配しておけば花束やメッセージを贈れるサービスがあるようです。
「しあわせの郷紀行」大歩危駅発車後のおもてなしを満喫!
車両を探訪しているうちに発車時刻が迫り、席に戻りました。
しあわせの郷紀行:
大歩危駅 14時19分発 →(土讃線経由)→ 多度津駅 17時21分着

席に戻るとアテンダントがやってきて、指定券と乗車券を提示。そして、予約しておいた食事のデジタルきっぷの画面も提示しました。検札は本来車掌の業務ですが、この列車ではアテンダントが行っているようです。
定刻の14時19分、列車が大歩危駅を発車。これから約3時間かけて、一路多度津駅へ向かいます。

発車してすぐに、予約しておいた食事が給仕されました。アテンダントが遊山箱の開け方を丁寧に教えてくれました。
アテンダントは6名で乗務しているそうで、レストランのようにドリンクや軽食のオーダーを取って提供しています。食事にアルコールは付いていないので、別料金で1杯注文しました。

列車は吉野川沿いを走り、大歩危・小歩危渓谷を通ります。国道32号線越しに眺める吉野川が美しいです。

阿波川口駅では15分間停車し、駅舎を見学。「ぽんぽこ阿波川口」という愛称があるように、たぬきがテーマの駅のようです。

駅舎の屋根には大きなたぬきがいて、すべての乗客を見守っています。希望する乗客が全員駅舎の前に集まって、集合写真タイム。撮影した写真を車内で販売していました。

筆者は、5匹のたぬきとともに一人で撮影。この世界観は絶妙です。

席に戻ると、食事にほこりが付かないように紙製のカバーがかぶせられていました。列車オリジナルのデザインで「笑顔一番」というキャッチフレーズが心地よいです。このカバーは持ち帰ることが可能です。

列車は、何度か吉野川を渡ります。

ほどなく、阿波池田駅に到着し、8分間停車。ここでも記念撮影タイムがありました。

阿波池田駅を過ぎると、香川県境の山脈に向けて線路が上り坂になります。池田町の市街地を一望できます。

この辺で、食事のデザートタイム。和菓子とホットコーヒーが給仕されます。和菓子は持ち帰ることも可能です。

坪尻駅に5分間停車。普通列車が1日3往復しか停車しない秘境駅です。この駅はスイッチバック駅ですが、特急列車がスイッチバックに入る駅は全国的に見ても珍しいです。

坪尻駅を過ぎると長いトンネルを通り、香川県に入ります。車掌さんが巡回してきて、乗客全員に記念乗車証を配っていました。

讃岐財田駅では、9分間停車。先ほど注文したドリンクの代金をアテンダントに支払いました。現金だけではなく、キャッシュレス決済にも対応しています。

16時31分に、琴平駅に到着。ここで下車する乗客が多くいました。

琴平駅には「四国まんなか千年ものがたり」専用の待合室「Taiju」があり、発車まで過ごせます。

予約制の食事を注文していた人にはフェアウェルサービス(お別れのサービス)としてアイスクリームが提供されました。
30分間弱の停車時間が過ぎる前に席に戻り、琴平駅を16時59分に発車。華やいだ時間が終わり、車内は落ち着いた雰囲気です。
多度津駅に到着する前にアテンダントがあいさつに見え、乗客一人一人に声をかけていました。筆者もここで列車に関するお話をいろいろとうかがいました。

定刻の17時21分に終点の多度津駅に到着しました。大歩危駅からのゆっくりとした乗り鉄は、ここでおしまい。
まとめ

JR四国が運行する観光列車「四国まんなか千年ものがたり」は、車両や食事といったサービス水準の高さで定評があります。そのため、外国人観光客を含めて人気が高く、指定券を入手しづらい状況が続いています。
乗車定員57名に対してアテンダント6名がサービスに当たっており、きめ細やかなサービスを受けられることがこの列車の人気の源です。
多度津駅ゆき上り列車「しあわせの郷紀行」で提供される事前予約制の食事は、徳島県の郷土色が感じられる遊山箱に入っています。値段は張りますが、この列車でしかいただけない食事なので、できれば体験しておきたいところです。
筆者が確認したところでは、座席に電源コンセントやUSB充電ポートが見当たらなかったので、念のためモバイルバッテリーを持参することをおススメします。
下り列車「そらの郷紀行」とは異なり、上り列車「しあわせの郷紀行」は多くの駅に停車して下車観光の時間が多く取られています。充実した乗り鉄を期待するのであれば、「しあわせの郷紀行」を旅程に取り入れてはいかがでしょうか。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 観光列車「四国まんなか千年ものがたり」(JR四国)2026.3閲覧
● JR四国ツアーウェブサイト(JR四国)2026.3閲覧
当記事の改訂履歴
2026年3月31日:当サイト初稿



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