JRバス各社の精神障害者割引を賢く利用するコツを深掘り！東京・大阪間夜行バス利用体験から対象路線や利用方法を詳しく解説

JR各社では、2025年4月から精神障害者保健福祉手帳を持つ人に対する運賃の割引が始まりました。鉄道だけではなく、実はJRバスも割引の対象です。

鉄道で割引が始まったことは広く知られている一方、JRバスの割引拡大についてはあまり知られていないのではないでしょうか。

日常生活に欠かせない路線バスについては、従来から割引制度が実施されてきました。しかし、都市間を結ぶ高速バスの割引導入が遅れていました。

鉄道で遠距離を移動する運賃が高いことは、遠くに出かけたいと思う当事者にとって経済的な障壁になっています。鉄道よりも運賃が安い高速バスの運賃が割引対象になったことで、従来よりも出かけやすくなったはずです。

JRの高速バスについては、全路線が割引になるわけではありません。幸いなことに東京・大阪間などの主要都市間の路線は割引の対象ですが、対象外の路線がまだまだ多いことを知っておきたいです。

この記事では、全国のJRバス各社における精神障害者保健福祉手帳（以下「手帳」と表記）を持つ人に対する割引制度について、手帳を持つ立場から詳しく解説します。

東京駅から大阪駅まで割引運賃で夜行バスを利用した時の様子を通じて、割引対象路線や利用方法について理解していただければ幸いです。

この記事から分かること

一般路線バスについては、北海道地区を除いて全路線が割引対象であること
高速バスに関しては距離制限は特になく、対象路線であれば割引が適用されること
他社との共同運行路線は、例外を除き精神手帳に対する割引が適用されないこと

JRバス各社においても運賃の割引が始まった～経緯と意義～

はじめに、JRバス各社で手帳所持者に対する割引が開始された経緯と、割引制度の意義についてお話しします。

割引制度導入の経緯

精神障害者保健福祉手帳の所持者に対する運賃割引制度の導入に関して、JRグループ名義のニュースリリースが2024年4月14日に発信されました。

このリリースには、2025年4月からJR各社で割引制度が始まることが記載されており、実際に割引の適用が開始されています。旅客鉄道会社6社については、当然ながら割引制度の対象に含まれますが、実はJRバス各社も同様です。

一部のJRバス会社においては、一般路線バスについて従来から運賃の割引が実施されてきましたが、高速バスは長らく対象外でした。

2025年4月に割引制度の運用が本格的に始まってから、一部の高速バス路線にも割引対象が拡大しました。筆者も、高速バスへの拡大に関する告知を目にし、JRバスも割引制度の対象が広がったことを改めて認識しました。

割引制度導入の意義・課題

障害者手帳を持つ当事者の中でも、精神障害者と身体障害者では社会的な地位に差があります。当記事では詳しく述べませんが、精神障害者は身体障害者よりも就労が一層困難で、それゆえ収入水準そのものも低いです。

精神障害者であることによって社会から隔絶され、経済的に困窮しがちであるため、社会からの経済的支援が欠かせません。

それにもかかわらず、精神障害者保健福祉手帳所持者への運賃割引制度の導入が一向に進みませんでした。2025年4月に割引制度がようやく始まったことは当事者にとっては朗報で、社会生活の一助となっています。

しかし、バス会社や路線によって割引条件が異なり、利用するたびに細かく確認しなければならないことに理不尽さを覚える人は多いのではないでしょうか。

JRバスにおける運賃割引の対象者・対象路線・割引内容

ここでは、JRバスにおける精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃割引の内容や制限についてご説明します。JRバスに関しては、割引制度の内容が鉄道とは異なる点があるため、注意していただきたいです。

身体障害者手帳および療育手帳所持者については、対象路線や条件の制限なく一律に割引が適用されるため、説明を割愛します。

割引対象者

精神障害者保健福祉手帳を所持する人のうち、手帳に「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額」という表示と「第一種」もしくは「第二種」の表示がある場合が、運賃割引の対象者です。手帳の等級と種別の関係は、以下の通りです。

第一種：手帳1級
第二種：手帳2級・3級

一般路線バスにおいては、手帳等級のみの記載であっても割引が適用されてきたため、一部の会社では手帳等級の記載のみでも割引を受けられる場合があります。

しかし、現在は原則的に第一種・第二種いずれかの記載が必須です。手帳に記載がない場合、交通機関を利用する前に居住する自治体の役所で種別を記載してもらいましょう。

割引対象会社・対象路線（一般路線バス・高速バス）

全国に8社あるJRバス会社のうち、北海道各地を結ぶジェイ・アール北海道バスを除く7社が精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃の割引を実施しています（一般路線バス・高速バス）。

一般路線バスは比較的近距離を走るバスで、日常生活に密着しています。日常生活の支援という性格が強く、従来から割引が実施されてきました。

高速バスは、比較的遠距離の都市間を結びます。高速バスは日常生活に必須とは言えないため、これまで割引対象外となっていました。

鉄道を一人で利用する場合の距離制限（片道100kmを超えること）はバスにはなく、路線別に距離に関係なく割引の有無が定められています。

多くの路線では複数のバス会社が共同運行されており、割引制度の対象外であることが多いです。割引対象の路線であっても、対象便がJRバスのみの場合があるので、乗車予定便の運行会社をあらかじめ確認しましょう。

各社における割引対象路線は、以下の通りです。記載がない路線は現在割引対象外ですが、今後割引対象として拡大する可能性はあります。

ジェイアールバス東北

東北エリア内および東北エリア各地と首都圏または北陸を結ぶバス路線が、JRバス東北の営業エリアです。一般路線バス全線の他、一部の高速バス路線が割引対象になります。

ジェイアールバス関東

首都圏・長野県および福島県白河地区のバス路線および首都圏と各地を結ぶバス路線が、JRバス関東の営業エリアです。一般路線バス全線および一部の高速バス路線が割引対象になります。

ジェイアール東海バス

JRバス東海は、東海地区を発着する高速バス路線を運営しています。ファンタジアなごや号（名古屋・TDL線）を除く全路線が、割引対象です。

西日本ジェイアールバス

近畿地方および北陸地方を発着する一般路線バスおよび高速バスを運営しています。一般路線バス全線、一部の高速バス路線および一部の定期観光バスコースが割引対象になります。

JRバス中国

広島県・山口県内の一般路線バスおよび広島県・山口県と各地を結ぶ高速バスが、JRバス中国の営業エリアです。一般路線バス全線、一部の高速バス路線および空港連絡バス（広島空港線）が割引対象になります。

ジェイアール四国バス

四国内を発着する路線バスおよび高速バスが、JR四国バスの営業エリアです。一般路線バス全線の他、一部の高速バス路線が割引対象になります。

JR九州バス

九州内を発着する路線バスおよび高速バスが、JR九州バスの営業エリアです。「ひこぼしライン（日田彦山線BRT）」や「B&Sみやざき」を含む全路線が割引対象に含まれます。

各社の割引対象路線については、記事末尾に掲載したAppendixを参照してください。

割引内容（普通運賃）

JRバス各社の割引条件や割引内容は概ね同一ですが、JRバス中国とJR九州バスに関しては、割引内容がより広範です。

手帳の種別により、以下の通り普通運賃の割引が適用されます。

第一種：本人・付添人とも5割引（同一行動要）
第二種：本人のみ5割引

手帳の提示で割引になる運賃の金額は、所定運賃が基準になります。例えば、東京・大阪間の所定運賃が10,000円ならば、割引後の金額は5,000円です。ネット割などの割引運賃から50％割引になるわけではないことに留意しましょう。

そして、ネット割の運賃額と手帳割引の運賃額を比較することが大切です。時期によっては、ネット割の金額が所定運賃ベースの手帳割引の金額を下回る場合があります（例えば、手帳割引が5,000円でネット割が4,000円のような場合）。

自身のニーズに合わせ、適切な運賃を選択するようにしましょう。

利用方法（予約方法・運賃の支払方法）

ここでは、JRバス運賃の割引の受け方について、具体的にご説明します。きっぷを購入する時とバスに乗車する時に、それぞれ手帳の提示が必要です。

予約が必要ない便

一般路線バスや運行距離が短い路線では、予約は必要とされていません。

予約の必要がない便に乗車する場合、運転手に運賃を支払う際に手帳を提示し、運賃箱に現金を入れます。路線によっては、交通系ICカードが使用できる場合もあります。

事前にきっぷを購入する必要がないため、特別な準備をする必要はありません。

事前の予約購入が必要な便

長距離を走る便や夜行バスに関しては、予約が必要です。予約を行い、きっぷを購入するには、以下の方法があります。

予約をする際に、手帳を持っていることと割引の適用を希望することを忘れずに申し出ましょう。

ネット予約
電話予約
きっぷうりばで直接購入

予約方法を問わず、バスに乗車する時には運転手に手帳を提示する必要があります。手帳ときっぷを忘れずに持参しましょう。

ネット予約

JRバスの便をネット予約するには、便によって「高速バスネット」または「発車オーライネット」を利用します。

手帳による割引を適用できる場合、人数欄には大人とは別に「障割」などと表示されるので、それを選択しましょう。表示されない場合、ネットでは手帳割引の予約ができません。

● 高速バスネット

高速バスネット：全国の高速バス・夜行・深夜バス予約

高速バス・夜行バスのご予約なら高速バスネットへ。全国各都市を結ぶ高速バス・夜行バスが簡単・お得にご予約いただけます。クレジット決済なら乗車券を自宅で印刷して直接のりばへ。予約～乗車までがスピーディ。コンビニでも購入できます。

● 発車オーライネット

高速バス・夜行/深夜バスの予約なら - 発車オ～ライネット

東京、大阪、名古屋発着をはじめ、全国400路線以上から選べる高速バス・夜行バスの予約サイト【発車オ～ライネット】。ディズニーやUSJ、空港バス、観光コース等プランも充実！コンビニ発券・クレジット決済、モバイルチケットでバス予約がとても簡単！

この操作がややこしいことと、便によって複数のサービスを使い分けなければならないのが、筆者個人的にはあまり好きではありません。心配であれば、電話予約やきっぷうりばの利用を検討するとよいのではないでしょうか。

電話予約

手帳割引に関して不明点を確認した上で予約ができるため、予約方法として有力です。予約が必要かどうかわからない場合も、電話で問い合わせるとよいでしょう。

大前提として、バスを利用する際に必要な配慮があれば、予約する前に電話で相談することがとても重要でしょう。そのため、結局のところ電話する機会が多くなるのではないでしょうか。

JRバス各社の具体的な電話番号については、当記事には掲載を見合わせます。「JRバス●●　予約　電話番号」で検索してみてください（●●は会社名）。

きっぷうりば（窓口）で購入

東京駅八重洲南口のJRバスのりば、大阪駅JR高速バスターミナルをはじめ、主要なバスターミナルにはきっぷうりばがあります。

上述したネット予約は操作手順が煩雑なので、駅窓口に行けるようであれば対面できっぷを買うと安心でしょう。電話予約をした場合、きっぷうりばで代金を決済するように指示されることもあるようです。

窓口できっぷを買うには、手帳を提示して代金を決済すると、その場できっぷをもらえます。乗車時に必要なので、なくさないようにしましょう。

これまでご説明した内容をよく理解できるように、筆者が東京駅から大阪駅まで「グランドリーム」号に乗車した体験をご紹介します！

東京・大阪間の夜行バス「グランドリーム」乗車体験

精神障害者保健福祉手帳を所持する人向けの運賃割引がJR高速バスでも始まったと知り、大阪駅まで夜行バスを利用することを思い立ちました。

東京駅八重洲南口から「グランドリーム」号に乗車し、大阪駅に向かった際の様子をご紹介します。窓口のきっぷ購入から大阪駅に到着するまで、順を追ってご説明します。

予約編（きっぷの購入）

東京・大阪線で運行される夜行バス「グランドリーム」号は2階建ての車両が使用されており、2階が3列シート、1階が車両によって3列か4列シートのいずれかです。

この便に乗車するには、予約が必要です。ネット予約を利用すれば便利ですが、筆者は窓口に立ち寄れる環境にあるので、あらかじめ窓口できっぷを購入しました。

東京駅八重洲南口にある高速バスきっぷうりばで手帳を提示して、きっぷを購入。乗車日と希望便を伝える時、あわせて最前部の席を希望したら空きがありました。ネット予約で空席状況を確認したら空いていなかったため、窓口でしか割り当てられない席が確保されている可能性があります。

代金をクレジットカードで支払い、きっぷを受け取りました。赤色の大きめなサイズの券で、下部にQRコードが印字されています。

ネット予約サービス「高速バスネット」で空席状況を見てみたら、ネット割以外の所定運賃の席はまだまだ空いていました。乗車当日まで運賃額が変わらなかったので、この金額で固定のようです。なお、この便に関しては、障割をネットで予約可能です。

乗車編（いざ大阪駅へ！）

乗車当日、22時ちょうどに東京駅八重洲南口のJRバスのりばへ。

グランドリーム9号：
東京駅 22時20分発 → 大阪駅 6時51分着

この便が発車するのは、7番のりば。日中は成田空港ゆきのバスが頻発しています。22時台は、大阪駅ゆきの便ばかりです。

定刻10分前の22時10分にバスが到着。西日本JRバス所有の車両で、スカニア社製の2階建てバスです。

手帳ときっぷを見せて、車内へ。2階に上がると、3列シートが見えてきました。独立シートはいいものですが、2階建てのバスなので天井がとにかく低いです。

筆者は、最前列の席へ。夜行便のためカーテンが閉められていますが、昼行便であれば前面の展望が最高のはずです。

東京駅を発車した時点では、JRバス関東の乗務員が運転を担当。バスタ新宿に立ち寄ってから、東名高速道路へ。鮎沢パーキングエリア（神奈川県山北町）で休憩。

未明の3時ちょうどに、愛知県新城市にあるJRバス関東の営業所に到着。ここではJRバス関東の乗務員と西日本JRバスの乗務員が交代。新城ベースを境に、東西が分かれている形です。乗客は、ここでは乗降できません。

東名阪自動車道御在所サービスエリア（三重県四日市市）には4時30分に到着し、トイレ休憩。

終点の大阪駅バスターミナルには、定刻ちょうどの6時51分に到着。公道を走るバスにもかかわらず1分も違わず着いた時間の正確さには、よい意味でただただ驚きました。

ゆりかごシートにもかかわらず横になれるわけではなく、よく眠れませんでした。やはり夜行バスはきついです。

運賃の割引制度は完備したが～精神障害者が夜行バスを利用する是非～

新幹線や特急列車よりも運賃設定が安価な高速バスに手帳割引が適用され、経済的に厳しくても遠出がしやすくなりました。

東京・大阪間を割引で5千円程度で移動できれば、価格面で移動をためらわずに済みます。経済的なハンディキャップがある精神障害者にとって、リーズナブルな価格は非常にありがたいです。

しかし、精神疾患を有する人が夜行バスを利用するのは、健康面で議論の余地があるでしょう。

病気とうまく付き合うには生活リズムを維持することが重要で、本来は十分な睡眠が欠かせません。ところが、夜行バスは非日常の空間であり、熟睡できる環境とは程遠いです。睡眠が十分にとれないことにより、体調に悪影響がもたらされることが考えられます。

夜行バスは思ったよりも体力を消耗するため、運賃の割引制度が整った状況であっても、利用するか否かを慎重に検討したいところです。

まとめ

2025年4月以降、北海道地区を除くJRバス各社が運行する高速バスについても、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃割引が拡大しました。ただし、本格的な導入はまだこれからという状況で、すでに導入されている路線は一部のみです。

手帳には、原則的に種別（第一種・第二種）が記載されている必要があります。あらかじめ役所で記載してもらってからきっぷを購入しましょう。

手帳の種別が第一種であれば本人および付添人が割引対象になり、第二種であれば本人のみが割引対象です。会社によっては定期運賃も割引対象に含まれますが、原則は普通運賃のみと考えるとよいでしょう。

JRバスの運賃割引制度が導入され、遠距離の都市間を安価で移動できるようになったことを感謝しつつ、うまく活用したいです。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました！