JR四国管内においては出札業務が大幅に縮小され、みどりの窓口が設置されている駅が数える位になってしまいました。閉鎖された窓口の代替として、みどりの券売機プラス(インターホン付き指定席券売機)の導入が進んでいます。
紙のきっぷの発売が縮小する一方、JR四国が展開するチケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」の利用が伸びています。このような事情があるため、手売りきっぷは風前の灯火です。
しかし、手売りきっぷが完全に絶滅したと思い込むのは、まだ早すぎます。
きっぷ鉄界隈で有名になった予土線近永駅の出札窓口を、2023年6月にようやく訪問できました。同年以降きっぷの発売範囲がかなり縮小されたものの、貴重な手売りきっぷをいまだに入手できる、夢のような場所です。

JR四国管内には簡易委託駅が何か所か残っていますが、常備券および補充券を発売している駅は一部に限定されます。いずれの駅もアクセスが悪いので、よく計画した上で訪問しましょう。
この記事では、JR四国管内のきっぷ鉄事情をお話しした上で、簡易委託駅を訪問して入手した常備券や補充券を、読者の皆さまと共有します。
- JR四国管内に設置されていたPOS端末は2024年3月をもって消滅したこと
- ほとんどの簡易委託駅では車発機を使用して乗車券類を発売していること
- 常備券および補充券を購入できるのは近永駅と卯之町駅に限られること
JR四国管内のきっぷ鉄事情

JR四国において、従来は多くの簡易委託駅にPOS端末や常備券・補充券が設備されていました。しかし、2022年から2023年にかけて出札業務が大幅に縮小され、POS端末設置駅や簡易委託駅が急速に減少しました。
JR四国はチケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」の展開に舵を切っていて、手売りきっぷはおろか、出札窓口自体がわずかな数になりました。
2024年3月にはJR四国の駅からPOS端末が消滅し、紙のきっぷ自体が減っている状況です。そのような状況でも、わずかながら手売りきっぷを発売する駅が残っています。
JR四国においても、常備券や補充券を発売する際には、経路や発売金額を端末に登録します。かなり手数がかかる作業です。
当記事を投稿した時点で常備券もしくは補充券が残っている駅は、以下の駅に限られます。
- 予土線近永駅(簡易委託駅)
- 予土線江川崎駅(簡易委託駅)
- 予讃線卯之町駅(簡易委託駅)
- 牟岐線由岐駅(簡易委託駅)*
- 牟岐線牟岐駅(直営駅)*
このうち、由岐駅および江川崎駅においては、定期券と6枚回数券のみが発売されています。
以下の駅も簡易委託駅ですが、従来設置されていたPOS端末が撤去されました。現在は車発機を使用して、乗車券類が発売されています。
- 高徳線屋島駅
- 牟岐線日和佐駅
- 土讃線大杉駅
- 土讃線土佐久礼駅
- 予土線土佐大正駅 *
- 予土線松丸駅 *
* が付された駅については筆者が直接確認しておらず、間接的な情報であることをお断りします。
画像引用元:JR四国ウェブサイト
これは、きっぷの発売箇所に関するJR四国からの告知です。徐々に乗車券類の発売範囲が狭まり、現在では限られた券種を当日に限って購入できる状況です。
JR四国管内から紙のきっぷ自体が消滅するのは、時間の問題かもしれません。

それでは、各駅で発売されている主な手売りきっぷを見ていきましょう。
予土線近永駅【簡易委託】

予土線近永駅では、JR四国管内を対象にした乗車券類を、昔ながらの方法で手売りしています。そのため、きっぷ鉄の聖地として界隈で有名になり、NHKの報道番組でも紹介されました。2023年に発売範囲が狭まるまでは全国のJR線きっぷを購入できて、まさに「JR全線きっぷうりば」のような状況だったそうです。
きっぷ鉄にとっては手売りきっぷの聖地ですが、アクセスの悪い奥地にあることが難点です。近永駅がある愛媛県鬼北町は南予地方に位置していて、大都市からはなかなかたどり着けません。
筆者も長年行きたいと思っていたものの、遠さゆえになかなか訪問を実現できないでいました。2023年になり、念願が叶ってようやく訪問できた次第です。

近永駅の出札業務は、鬼北町が受託する形で行われています。営業時間は朝8時前から夕方17時前までで、途中に昼休みがあります。近永駅自体が遠隔地にありますが、収集自体は難関ではありません。

2023年に縮小された乗車券類の発売範囲が書かれています。一時的にJR四国のウェブサイトにも掲載されていましたが、現在は駅に掲示されているのみです。
常備券

JR四国管内の簡易委託駅の中で常備券が発売されているのは、近永駅が唯一になりました。
金額式の常備券(赤券)が5口座あります。そのうち、宇和島駅ゆきは小児専用券があります。宇和島駅ゆきの430円区間の券だけは実需があるようで、券番が進んでいました。
青券の常備券は2口座あり、松山駅ゆきと高知駅ゆきです。高額なきっぷのために筆者のようなきっぷオタしか購入しないようで、券番はほとんど進んでいませんでした。
往復の常備券は、宇和島駅ゆきのみです。
筆者が訪問したのが2023年6月下旬で、2023年5月下旬に実施された運賃改定から1か月でした。券番の進み具合から、1か月間でコレクターが約20人訪れたことが推測できます。そのうち、全口座を買うコア層が約10人というわけです。
補充券

JR四国管内の簡易委託駅の中で補充券を発券してもらえるのは、近永駅の他には数少なくなりました。
近永駅には、補充片道乗車券(補片)、特別補充券(出補)、料金専用補充券(料補)と一通り揃っています。以前は発駅や経路に制限がなく、それこそJR全線きっぷうりば状態でしたが、現在は発売制限があります。その制限については、上述した写真をご覧ください。
補充券の発駅は、宇和島駅を含む予土線内の駅で、着駅がJR四国管内完結という条件です。料補で発券されるきっぷ(自由席特急券)は、当該区間の乗車券とのセット発売が条件です。当該自由席特急券の発駅についても、宇和島駅周辺に限定されています。指定券の取り扱いは、現在ありません。
Sきっぷ・定期券
宇和島駅から松山駅までのSきっぷと通勤・通学定期券が発売されていますが、強者以外は購入しないと思います。
予土線江川崎駅【簡易委託】

高知県四万十市(旧西土佐村域)にある駅です。地元の四万十市が受託する簡易委託駅です。平日・土曜の日中に窓口が開いています。

この駅は地元密着の駅で、それが発売券種に現れています。普通乗車券の取り扱いはなく、6枚回数券と通学定期券に限られます。

筆者は珍しい6枚回数券を購入してみました。様式は、補充式の独自の6枚回数券です。
予讃線卯之町駅【簡易委託】

愛媛県西予市の中心駅で、西予市役所と一体整備された駅です。無人駅で近距離券売機のみ設置されていますが、駅前にある「どんぶり館駅前店あおぞら」にて乗車券類の発売が簡易委託されています。
このお店の営業時間は、お店のウェブサイトに記載されています。土曜日を除く日中の営業です。

ここも地元密着の駅ですが、普通乗車券の取り扱いもあります。Sきっぷと通学定期券、特急定期券「快てーき」が発売されています。

筆者は普通乗車券を購入しました。きっぷの区間にかかわらず、様式は補充片道1種類のみです。
おまけ:徳島線学駅入場券

最後に、JR四国の駅で広く発売している合格祈願きっぷを紹介します。年によって発売の状況は変わりますが、発売自体は続いています。
徳島線学駅の硬券入場券のセットですが、5枚セットで購入するとお守り袋(4色から選べる)が付いてきました。珍しい体裁なので、おススメです。5枚とも緑色の地紋が印刷されていましたが、もしも5色の地紋が用意されていたらカラフルで、商品性がより高くなるのにと思いました。
まとめ買いした5枚の硬券は連番でした。
謝辞

JR四国の手売り券を発売する簡易委託駅を多くめぐれました。訪問のための情報を提供してくれた先人には、深く感謝いたします。
JR四国の補充券に関しては発券するための工数が多く、煩雑な作業です。その作業を行っていただいた受託者さんにも、この場でお礼申し上げたいと思います。
参考資料
● 駅・鉄道情報(JR四国)2025.5閲覧
当記事の改訂履歴
2025年5月29日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年7月05日:前サイト第2稿
2022年12月16日:前サイト初稿 再構成
2016年6月25日:前サイト初稿(原文作成)
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