香川県内には、JR四国と高松琴平電気鉄道(以下「ことでん」)の列車が走っています。そのうち、香川県全域に網を張るのはJR四国、高松市周辺や琴平町を走るのが「ことでん」です。それぞれ、金刀比羅宮や丸亀城、屋島など、香川県中部の観光地を結んでいます。
それらの観光スポットを移動するのに便利なのが「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」です。このきっぷは、JR四国と「ことでん」の2社で共同発売されています。発売がJR線側だけのフリーきっぷが多い中、他社線側の駅でも発売される珍しいきっぷです。
両線に一日乗り放題のこのきっぷの値段は、大人2,200円・小児1,100円と、かなり高めの設定です。コスパや使い勝手が気になるのではないでしょうか。

観光しながら1日でJRと「ことでん」の列車両方に乗車するのは、かなり慌ただしいです。便利なきっぷですが価格設定が高めで、一日中頑張って乗車しないと料金の元が取れません。
この記事では、JR四国のフリーきっぷ「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」の概要をご紹介し、実際に使用した体験を共有します。その上で、このきっぷがどれだけ料金面でおトクか、コスパについても掘り下げたいと思います。
- 高松市と琴平町間の単純往復では元が取れないこと
- 乗り鉄や四国八十八か所霊場めぐりに向いたきっぷであること
- ことでんの各駅・高松空港では、常備券を入手できること
乗り鉄や霊場めぐりに向いた「ことでん・JRくるり~んきっぷ」

「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」がどのような利用シーンに適しているか、最初に考えたいと思います。
JR四国と「ことでん」の2社が共同で発売しているため、香川県を走る鉄道の大半に乗車できるオールマイティーさが、このフリーきっぷの大きな特長です。しかし、このきっぷの価格設定が高く、元を取るためには一日中多く乗り降りする必要があります。
「ことでん」とJR四国の路線を乗り歩く乗り鉄さんに向いていることはもちろん、香川県の霊場を鉄道で巡るお遍路さんにも向いています。
四国八十八か所霊場のうち、第72番から第87番にかけてのお寺は、このフリーきっぷのフリー乗車区間が最寄りです。列車を乗り降りすることが多いお遍路さんが経済的に鉄道を利用するのに適したきっぷと言えるでしょう。
「ことでん・JRくるり~んきっぷ」のフリー乗車区間・買い方
ここでは、「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」に関する一般的な情報を押さえたいと思います。
フリー乗車区間
JR四国がこのフリーきっぷを企画・発売していますが、フリー乗車区間にはJR線のみならず「ことでん」全線も含まれます。
画像引用元:JR四国「ことでん・JRくるり~んきっぷ」販売パンフレット
JR高松駅・高徳線志度駅間、JR高松駅・土讃線琴平駅間、および「ことでん」全線が一日乗り放題です。香川県中部の鉄道全区間を網羅しています。
特急券を別に買えばJR線の特急列車も利用可能ですが、「サンライズ瀬戸」号は利用できません。
きっぷの発売箇所
JR四国・ことでん2社共通のきっぷだけに、多くの箇所できっぷを発売しているのが特長です。多くのフリーきっぷのようにJR側だけでしか発売していないといった不便さはありません。
JR四国
JR四国の駅にあるみどりの窓口・みどりの券売機プラス(インターホン付きの指定席券売機)にて購入できます。また、四国内の旅行会社の窓口でも購入できますし、JR四国のチケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」上でのオンライン購入も可能です。
ことでん
「ことでん」側でも、一部の駅でこのきっぷが発売されています。
発売駅:高松築港駅/瓦町駅/栗林公園駅/琴電琴平駅/長尾駅/琴電志度駅
高松空港
鉄道駅の他に、高松空港の到着ロビーにある案内所でも、このきっぷを買えます。高松空港に着いてすぐにきっぷを買えて便利ですが、空港バスはフリー乗車区間に含まれないので注意してください。
料金・きっぷの様式
利用対象者には制限がなく、通年で利用できます。また、事前購入の制限もなく、利用当日に購入可能です。したがって、利用したいと思った時に購入できます。
料金
JR四国と「ことでん」の普通運賃の値上げに合わせ、2023年5月に値上げされました。大人用と小児用の料金は次の通りです。
- 大人:2,200円
- 小児:1,100円
きっぷの様式(紙のきっぷ)
購入箇所によってきっぷの様式が異なる点が、2社共同発売の「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」ならではの特長です。
JR四国の駅で購入した場合は端末で発券され(マルス券)、ことでんの駅や高松空港で購入した場合、あらかじめ作製された紙のきっぷに日付が押されます(常備券)。

筆者は「ことでん」の駅できっぷを購入し、常備券を手にしました。常備券については自動改札を利用できないため、有人改札を通ります。
なお、JR四国で発行されたマルス券については、自動改札を通ることが可能です。
「しこくスマートえきちゃん」でデジタルきっぷとしてこのきっぷを購入した場合は、紙のきっぷを受け取る必要はありません。スマートフォン上に表示される画面を、駅員や車掌に提示します。
「しこくスマートえきちゃん」の使い方については、姉妹サイト「デジきっぷナビ」上の記事をぜひご一読ください。

「ことでん・JRくるり~んきっぷ」のコスパを考える

このように、「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」は、香川県中部を列車でめぐることができるオールマイティーなきっぷです。ただし、値段の高さが気になります。
ここでは、主要な区間の片道運賃を見た上で、1日でどれだけ乗車すればきっぷの元を取れるか、検討していきます。
主要区間の普通片道運賃との比較
主要区間の普通片道運賃は、下表のとおりです。
JR四国
区間 | 営業キロ | 運賃額(円) |
高松駅・琴平駅間 | 44.0 | 980 |
高松駅・丸亀駅間 | 28.5 | 630 |
丸亀駅・琴平駅間 | 15.5 | 430 |
高松駅・志度駅間 | 16.3 | 430 |
ことでん
区間 | 営業キロ | 運賃額(円) |
高松築港駅・琴電琴平駅間 | 32.9 | 730 |
高松築港駅・琴電志度駅間 | 14.2 | 500 |
高松築港駅・長尾駅間 | 16.3 | 550 |
琴電琴平線の運賃の安さが目立ちます。高松駅から琴平駅まで往復する場合、JRで1,960円、「ことでん」では1,460円です。JRと「ことでん」を片道ずつ利用する場合は、1,710円です。
高松駅から琴平駅まで単純往復する場合、JRで往復しても2,000円弱なので、きっぷの元は取れません。一日で琴平と丸亀、屋島、志度を訪れる場合は十分元を取れますが、かなり慌ただしく駆けめぐる感じです。
他のフリーきっぷとの比較
「ことでん」だけを利用する場合、別のフリーきっぷが発売されています。
1日フリーきっぷ:大人1,400円・小児700円
ことでんで高松築港駅から琴電琴平駅まで往復するだけできっぷの元が取れる、おトクなきっぷです。単に金刀比羅宮まで向かいたいのであれば、「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」でなくても十分に事足ります。
「ことでん・JRくるり~んきっぷ」で琴平駅に向かう

フリー乗車区間は特急列車を利用するほどの距離ではないため、実際に乗車するのは普通列車が多いと思います。
JRで高松駅から琴平駅までは44.0kmで、所要時間は約1時間です。JRの列車は揺れが少なく、普通列車でも快適です。

JR琴平駅は最近改装されて、駅舎内がとてもきれいです。週末には東京駅からの直通列車「サンライズ瀬戸」号が乗り入れる日もあります。

ことでん高松築港駅から琴電琴平駅までは32.9kmで、JRよりも近道です。所要時間はJRと同じく、約1時間です。停車駅が多く、車内が結構揺れるので、快適さはJRに軍配が上がります。

琴電琴平駅はローカル線の駅で、その雰囲気がよく出ています。金刀比羅宮参拝のための列車という色が濃いです。駅舎も歴史があります。
まとめ

香川県中部の琴平、丸亀、高松、志度までのエリアをカバーするフリーきっぷ「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」。JRと「ことでん」の両方を利用できる、オールマイティーなきっぷです。
気になるのが、料金の高さです。「ことでん」やJRの普通運賃が意外に安いことから、料金設定の高さがかえって目立ちます。
「ことでん」のみ乗車できる「1日フリーきっぷ」がかなり割安なことから、琴平に行くだけであれば、必ずしも「ことでん・JRくるり〜んきっぷ」にこだわる必要はありません。
意外なところでは、JR沿線に点在する四国八十八か所霊場をめぐるお遍路さんにとって有用なきっぷです。乗り鉄にとどまらない活用法と言えるでしょう。
JRでしか行けないところと、「ことでん」でしか行けないところを一日で周遊する場合にはこのきっぷを活用できますが、かなり慌ただしい旅程になります。きっぷを買う前に十分検討することをおススメします。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● ことでん・JRくるり~んきっぷ (JR四国ツアー) 2025.5閲覧
● 企画きっぷのご案内(高松琴平電気鉄道) 2025.5閲覧
当記事の改訂履歴
2025年5月27日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年6月30日:前サイト初稿(原文作成)
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