中部地方の拠点都市、愛知県名古屋市には、名古屋市交通局が運営する地下鉄や市バスがくまなく走っています。
障害者をはじめとした対象者向けに運賃の福祉割引が導入されており、障害者手帳や証明書を提示すれば、地下鉄および市バスを割引運賃で利用可能です。駅の券売機できっぷを買う時やバスに乗車する時に、割引運賃を支払います。
中京圏で利用可能な交通系ICカード「manaca(マナカ)」には「割引用マナカ」が設定されていて、福祉割引の対象者であれば原則的に誰でも利用できます。乗車するたびに手帳等の証明書を提示することなく、自動的に運賃が割引になるため、とても便利です。

手帳等の証明書については発行自治体に条件がないため、名古屋市への訪問者でも問題なく割引を受けられます。割引用マナカを利用すると便利ですが、名鉄線やJR線では自動改札機を利用できないので注意しましょう。
この記事では、名古屋市交通局が運営する地下鉄・市バスにおける福祉割引について、制度の概要や割引の受け方をご説明します。また、名古屋市営地下鉄・市バスや特定の交通機関で利用できる交通系ICカード「割引用マナカ」の購入・使用方法をあわせてご紹介します。
- 付き添いが必要な場合、介護者・付添人にも運賃の割引が適用されること
- 名古屋市民には福祉特別乗車券が支給され、運賃を支払う必要がないこと
- 難病患者にも福祉割引の適用があるものの完全ではなく、対象外の制度があること
名古屋市営地下鉄・市バスにおける福祉割引制度(障害者を含む)

はじめに、名古屋市内の公共交通網を運営する名古屋市交通局における福祉割引制度の概要と割引の受け方についてご説明します。
市営地下鉄・市バスの概要・幅広な福祉割引の利用対象者
名古屋市内には、中部地方随一の都市規模に見合った地下鉄・路線バス網が整備されています。JR名古屋駅や栄地区を中心に6路線の地下鉄が延びており、地下鉄が走っていない地域には市バスがくまなく乗り入れています。
名古屋市内における公共交通網の運営は、公営交通として名古屋市交通局が一手に担っているのが特徴です。そのため、社会的な支援が必要な層に対する運賃の福祉割引制度が、従来から整備されています。
福祉割引の対象者には、障害者手帳所持者だけではなく、児童養護施設に入所する児童や特別支援学校通学者も含まれています。また、手帳や証明書の発行自治体にも制限がないことから、運賃の割引を受けられる対象者が全国的に見ても多いです。
名古屋市交通局における運賃割引に関しては、必要と認められれば等級を問わず介護者・付添人にも適用されることから、支援が手厚いと言えるでしょう。
運賃割引の受け方
福祉割引の対象者が地下鉄や市バスを利用する際には、基本的には乗車するたびに手帳等の証明書を提示して運賃の割引を受けます。
地下鉄に乗車する時には各駅の券売機で割引用乗車券を購入し、市バスに乗車する時には乗車時に手帳等を提示して割引運賃を支払う形です。
名古屋市を中心とした中京圏では、「manaca(マナカ)」と呼ばれる全国交通系ICカードが普及しています。名古屋市地下鉄・市バスをはじめとした多くの公共交通機関で、マナカの利用が可能です。
マナカには、福祉割引の対象者を想定した「割引用マナカ」が設定されています。割引用マナカを購入すれば、乗車するたびに手帳等を見せることなく、割引運賃が自動的に適用されます。
このように、地下鉄・市バスの利用頻度に応じて、現金で運賃を支払うか割引用マナカを利用するかを選択可能です。
なお、関東地区や関西地区で発行されている第一種手帳所持者向け障害者用ICカードは、名古屋市交通局では使用できません。
運賃の福祉割引制度の詳細・福祉特別乗車券について

ここでは、名古屋市営地下鉄・市バスにおける運賃の福祉割引制度の詳細、および名古屋市民向けの「福祉特別乗車券」についてご説明します。
対象者
地下鉄・市バスの運賃割引の対象者は、以下の通りです。
障害者手帳所持者
- 身体障害者手帳所持者(1級-6級のみ)
- 療育手帳所持者(名古屋市においては愛護手帳)
- 精神障害者保健福祉手帳所持者
特定の証明書所持者
- 児童福祉施設利用者
- 戦傷病者・原爆被爆者
- 特別支援学校在学生
なお、名古屋市外在住の難病患者(特定医療費受給者証・指定難病)に関しては、割引制度の対象外です。
対象者本人の他、必要であると認められれば、同一行動をとる介護者・付添人3名までが運賃割引を受けられます。情報保障が必要な障害者にも配慮されていると言えるでしょう。
手帳の発行自治体による適用条件の差、および手帳に記載されている第一種・第二種による区別はありません。上記の割引対象者に含まれる限り、誰でも割引を受けられます。
対象区間・設備
名古屋市営地下鉄および市バスの全区間が、運賃割引の対象です。
なお、後述する割引用マナカについては、名古屋市交通局の他、あおなみ線・ゆとりーとライン・名鉄バスでも使用できます。
割引率
普通運賃および定期運賃が、ともに割引の対象です。割引が適用される定期運賃には通勤用と通学用があり、それぞれ特定の金額に設定されています(発売金額については、名古屋市交通局ウェブサイトを参照してください)。
定期運賃の割引率が高く、日常生活に支援が必要な人への支援が手厚いと言えるでしょう。
地下鉄
普通運賃:
大人運賃の50%(等級による区別なし)
通勤定期運賃:
特定額(大人運賃の50%から60%前後・等級による区別なし)
通学定期運賃:
特定額(大人運賃の75%前後・等級による区別なし)
市バス
普通運賃:
大人均一運賃の50%(等級による区別なし)
通勤定期運賃:
特定額(大人運賃の50%から60%前後・等級による区別なし)
通学定期運賃:
特定額(大人運賃の75%前後・等級による区別なし)
名古屋市民向け「福祉特別乗車券」について
名古屋市内に住民登録をしている場合、市営地下鉄・市バス・あおなみ線・ゆとりーとラインに無料で乗車できる「福祉特別乗車券」を選択できます。
福祉特別乗車券の支給を受けた場合、地下鉄・市バス等に乗車する際に運賃を支払う必要はありません。
利用対象者
名古屋市発行の下記証明書を持っている人が、福祉特別乗車券の支給対象です。
- 身体障害者手帳所持者(1級-4級のみ)
- 愛護手帳所持者
- 精神障害者保健福祉手帳所持者
- 特定医療費受給者証(指定難病)所持者
本人に加え、条件を満たせば同一行動をする介護者・付添人1名にも福祉特別乗車券の利用が可能です。
市営地下鉄・市バス・あおなみ線・ゆとりーとライン以外の交通機関については、名古屋市内の区間を利用した分の運賃が後日支給されます。
所得制限
福祉特別乗車券の支給を受けるにあたって、所得制限は特にありません。

名古屋市営地下鉄・市バスにおける運賃の割引制度について理解できたところで、きっぷの買い方や運賃の支払い方を見ていきたいと思います!
地下鉄における普通乗車券の購入・利用方法

ここでは、地下鉄に乗車する際、大人が普通乗車券を購入して乗車する方法をご説明します。割引用マナカを購入しない場合、券売機で紙のきっぷを購入して乗車するのが基本です。

各駅には、このような券売機が設置されています。

タッチパネルの左下に「わりびき」というボタンがあるので、押します。

きっぷを購入する段階では、手帳を提示する必要はありません。割引された金額が表示されるので、着駅までの金額を押して代金を投入します。

購入した割引きっぷです。券面には、白抜きで[割]と表示されています。このきっぷを自動改札機に通します。
名古屋鉄道と名古屋市交通局の運賃割引制度が異なるため、名鉄線への連絡きっぷを割引で購入することはできません。
割引運賃で市バスに乗車する方法

名古屋市交通局が運営する名古屋市内の市バスは全路線で均一運賃で、一部の例外を除き運賃前払い制です。
運賃の割引を受ける場合、乗車する際に手帳等を提示して割引運賃(大人100円・小児50円)を支払います。
ICカード「割引用マナカ」の利用条件および購入・利用方法

5回以上地下鉄や市バスに乗車する見込みがあれば、改札通過時や運賃支払時に手帳等の提示が不要なICカード「割引用マナカ」を作成しておくと、スムーズに乗車できて便利です。
ここでは、割引用マナカが利用可能な条件や割引用マナカの新規購入・使用・更新方法についてご説明します。
割引用マナカの利用対象者
割引用マナカの利用対象者は、地下鉄・市バスの運賃割引の対象者と同じです。
障害者手帳所持者(再掲)
- 身体障害者手帳所持者(1級-6級のみ)
- 療育手帳所持者(名古屋市においては愛護手帳)
- 精神障害者保健福祉手帳所持者
特定の証明書所持者(再掲)
- 児童福祉施設利用者
- 戦傷病者・原爆被爆者
- 特別支援学校在学生
対象者本人だけではなく、本人に同伴する介護者・付添人についても割引用マナカを購入できます。ただし、購入方法や使用方法には制限があるので、注意しましょう。しかしながら、この措置は、当事者や支援者にとって非常に手厚いと言えるでしょう。
ただし、難病患者(特定医療費受給者証所持者)については、あいにく割引用マナカの利用対象外です。
割引用マナカの利用可能区間
割引用マナカは、以下の交通機関で利用可能で、自動改札機や運賃箱では手帳等の証明書を提示することなく割引運賃が引き落とされます。
- 名古屋市営地下鉄・市バス
- あおなみ線
- ゆとりーとライン
- 名鉄バス
これらの交通機関以外では、割引用マナカで自動改札機を通過できません。名古屋市営地下鉄から直通運転で乗り入れる名鉄線では、割引用マナカを使用できないことに注意しましょう。
もちろん、割引用マナカにチャージした残高を使用して駅の券売機できっぷを買ったり、電子マネーとして使用したりすることは可能です。
新規購入方法
対象者本人のみ利用できる割引用マナカは、記名式カードです。そのため、カード作成の手続きが必要です。

割引用マナカを新規に購入するには、障害者手帳もしくは各種証明書を持って、市営地下鉄各駅の駅長室もしくは交通局サービスセンター(定期券うりば)に行きます(名古屋鉄道が管理する上小田井駅・上飯田駅を除く)。
記名式カードを発行するため、氏名や生年月日、電話番号といった個人情報を申込書に記入し、窓口に提出します。
[デポジット500円+運賃分500円=1,000円]から購入可能です。地下鉄の初乗り割引運賃や市バスの割引運賃がそれぞれ100円なので、5回乗車すれば500円分を使い切る計算になります。

購入したカードには、氏名に加え「割」という文字と有効期限が表示されています。
使用方法・カードの更新方法
割引用マナカの使用方法や更新方法は、以下の通りです。
カードの使用方法
割引用マナカの対象区間を利用する際には、手帳を提示することなく割引運賃が自動的に引き落とされます(手帳・証明書原本を携帯しましょう)。カードを自動改札機やカード読み取り機にかざすだけで大丈夫です。
カードの更新方法
割引用マナカには1年間の有効期限があり、毎年更新する必要があります。購入時期や生年月日にかかわらず、有効期限は一律で年度末の3月31日です。新年度になってから初めて使用する際に、窓口で更新手続きを行います。
更新後の有効期限は、年度末の翌年3月31日か手帳・証明書の有効期限のうち、いずれか早い方です。例えば、手帳の有効期限が8月31日である場合、割引用マナカの有効期限も8月31日に設定されます。
カードの更新手続きを行うには、障害者手帳を持って交通局の定期券発売所またはバス営業所・出張所に行きます。有効期限が更新された手帳等の証明書と割引用マナカをお忘れなく。
まとめ ~福祉に手厚い名古屋市ならではの運賃割引制度~

名古屋市交通局が運営する地下鉄および市バスにおいては、運賃の福祉割引が実施されています。
名古屋市の場合、運賃の福祉割引を受けられる対象者が幅広いのが特徴です。各種障害者手帳所持者の他、児童福祉施設利用者・特別支援学校在校生も対象者に含まれ、他都市よりも福祉施策の性格が一層強いと言えます。
名古屋市民は福祉特別乗車券の支給を選択することが可能で、割引運賃を支払うことなく市内の交通機関を無料で利用できます。したがって、運賃の割引制度を利用するのは、実質的に名古屋市外に在住している場合です。
運賃割引制度の対象者には地下鉄・市バスの普通運賃が50%割引が適用され、定期券は特定の金額で購入できます。また、対象者本人だけではなく、本人に同伴する介護者・付添人に対しても細かな条件なしに割引が適用されます。
乗車する都度手帳等を提示して現金で乗車する以外にも、全国交通系ICカードの「割引用マナカ」を利用できます。乗車するたびに手帳を提示することなく、自動的に割引運賃が適用されるので、とても便利です。
名古屋市は、公共交通機関の無料乗車制度や福祉割引制度が手厚い政令指定都市の一つです。福祉に手厚い名古屋市ならではの措置と言えるでしょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 市営交通料金(市バス・地下鉄)の軽減(名古屋市)2025.11閲覧
● 公営交通料金の減免 | 介護・障害情報提供システム(ウェルネットなごや)2025.11閲覧
● 割引制度(障害者など)について | 料金のご案内(名古屋市交通局)2025.11閲覧
● マナカの種類 | マナカとは(名古屋市交通局)2025.11閲覧
● マナカご利用案内(名古屋市交通局)2025.3

当記事の改訂履歴
2025年11月13日:当サイト初稿(リニューアル)
2019年8月25日:前サイト初稿(原文作成)


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