東北地方の基幹都市である仙台市では、障害者手帳の所持者向けに地下鉄や市バスで運賃の割引が提供されています。地下鉄に乗車する場合は駅で割引きっぷを購入し、市バスに乗車する際は手帳を提示して割引運賃を支払う形です。
仙台圏の公共交通機関では、ローカル版の交通系ICカード「icsca(イクスカ)」が利用可能です。icscaには障害者手帳所持者用の割引カードがあり「福祉割引用icsca」と呼ばれています。福祉割引用icscaがあれば、乗車する都度手帳を提示する手間が省けます。

宮城交通の路線バスに関しては、精神障害者保健福祉手帳に対する割引条件が仙台市地下鉄・市バスとは異なる点に注意が必要です。詳しくは記事後半でご説明します!
この記事では、仙台市交通局によって導入されている市営地下鉄および市バスの障害者割引制度の概要や割引の受け方をご説明します。福祉割引用icscaの作り方や使用方法についても、あわせてご紹介します。
- 地下鉄・市バスについては、手帳の発行自治体にかかわらず割引を受けられること
- 福祉割引用icscaを持てば手帳の提示なしに割引運賃が自動適用されること
- 福祉割引用icscaには有効期限が設定されており、毎年更新手続きが必要なこと
仙台市地下鉄・市バスにおける障害者割引制度の概要と経緯

最初に、仙台市地下鉄・市バスの概要および障害者割引制度の経緯についてお話しします。
市営地下鉄・市バスの概要・障害者割引制度導入の経緯
仙台には充実した公共交通網が張り巡らされており、その規模は東北地方随一の都市に見合っています。
仙台市内を走る地下鉄は、南北線および東西線です。仙台駅では、それらの2路線およびJR線が接続しています。また、地下鉄がない地域には、多くの市バスが走っています。
仙台市の地下鉄および市バスを運営する仙台市交通局では、身体障害者および知的障害者に対する障害者割引制度が従来から導入されていました。しかし、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する導入が遅かった上、割引対象者が仙台市内および宮城県内在住者に限定されていました。
2021年4月以降それらの制限がなくなり、精神障害者保健福祉手帳の発行自治体にかかわらず運賃の割引を受けられるようになりました。現在では、所用で仙台を訪れる手帳所持者や住民票を移せない仙台市内在住者も割引の恩恵を受けられます。
市営地下鉄・市バスにおける運賃の支払い方
障害者手帳所持者が市営地下鉄や市バスの運賃の割引を受ける場合、基本的には乗車するたびに手帳を提示して運賃を支払います。
地下鉄を利用する時には割引用のきっぷを券売機で購入し、改札を通る際に手帳を提示する形です。また、市バスに乗車する時には手帳を提示して運転士に運賃を支払います。
前述した通り、仙台には「icsca」と呼ばれるローカル版交通系ICカードがあります。障害者手帳所持者は、市営地下鉄・市バスで運賃が自動的に割引になる福祉割引用icscaが利用可能です。
このように、地下鉄や市バスの利用頻度に応じて現金で割引きっぷを購入するか、福祉割引用icscaを利用するかを選択できます。
運賃の障害者割引制度の詳細・ふれあい乗車証について

ここでは、仙台市地下鉄・市バスにおける運賃の障害者割引制度の詳細、および仙台市民向けの「ふれあい乗車証」についてご説明します。
対象者
各障害者手帳の所持者(障害者本人および介護者・付添人1名)が運賃割引の対象です。
手帳の種類や等級、手帳の発行自治体による適用条件の差、および手帳に記載されている第一種・第二種による区別はありません。手帳を持っていれば、誰でも割引を受けられます。
対象区間・設備
仙台市営地下鉄および市バスの全区間が、運賃割引の対象です。
後述する通り、精神障害者保健福祉手帳所持者の場合、仙台市内やその周辺部を走る宮城交通の路線バスでは割引条件が異なります。
割引率
定期運賃については、地下鉄と市バスで割引率が異なります。定期券利用者にとっても、割引が利用しやすいです。
地下鉄
- 普通運賃:50%(等級による区別なし)
- 定期運賃:23.1%(大人のみ:等級による区別なし)
市バス
- 普通運賃:50%(等級による区別なし)
- 定期運賃:30%(大人のみ:等級による区別なし)
仙台市民向け「ふれあい乗車証」について
仙台市民であれば、地下鉄および市バスの全区間、宮城交通の市内区間に無料で乗車できる「ふれあい乗車証」の所持を選択できます。
対象者
- 身体障害者手帳所持者(1級から4級:障害部位による条件あり)
- 療育手帳所持者(全員)
- 精神障害者保健福祉手帳所持者(全員)
所得制限
障害種別・等級の条件を満たせば手数料なしで「ふれあい乗車証」の発行を受けられますが、所得制限があります。本人の所得によって適用条件が細かく決まっていて、誰でも持てるわけではありません。
単身世帯で給与所得のみの場合、年収が概ね500万円以内であることが所得制限のボーダーラインです。所得制限に該当してしまった場合、当記事で説明する運賃の割引を利用することになります。
他自治体に比べ、仙台市は障害者の公共交通機関利用に対する支援が手厚いと言えるでしょう。
地下鉄における普通乗車券の購入・利用方法

ここでは、普通乗車券を購入して地下鉄に乗車するケースについてご説明します。福祉割引用icscaを購入しない場合、この手順に従います。
紙のきっぷを購入するケース
基本的なのが、券売機で紙のきっぷを購入して乗車する方法です。

各駅には、このような券売機が設置されています。

タッチパネルの左下に「ふくし(おとな)1枚」というボタンがあるので、押します。

きっぷを購入する段階では、手帳を提示する必要はありません。割引された金額が表示されるので、着駅までの金額を押して代金を投入します。

購入した割引きっぷです。券面には[小・割]と表示されています。このきっぷを自動改札機に通す形です。
交通系ICカードを利用するケース
障害者手帳で割引を受ける場合、Suica・PASMO等の全国交通系ICカード(無割引カード)の利用が可能です。そのカードで自動改札を通って通常運賃で入場し、着駅の有人改札で駅員に手帳を提示して、割引分の運賃を引き落としてもらいます。
なお、関東・関西地区において発行されている介護者・付添人同伴第一種障害者向け障害者用ICカードは、仙台市地下鉄・市バスでは使用できません。
福祉割引用icscaの購入・使用方法

4回以上地下鉄や市バスに乗車する場合、改札通過時や運賃支払時に手帳の提示が不要な福祉割引用icscaを作成しておくと、スムーズに乗車できて便利です。
ここでは、福祉割引用icscaの新規購入および更新方法、使用方法についてご説明します。
新規購入方法
障害者本人のみ利用できる福祉割引用icscaは、記名式カードです。したがって、カード作成の手続きが必要です。

福祉割引用icscaを新規に購入するには、障害者手帳を持って交通局の定期券発売所またはバス営業所・出張所に行きます。

記名式カードを発行するため、氏名や生年月日、電話番号といった個人情報を申込書に記入し、窓口に提出します。
[デポジット500円+運賃分500円=1,000円]から購入可能です。地下鉄の初乗り運賃が110円なので、4回乗車すれば500円分を大体使い切ることになります。

購入したカードには、氏名に加え「福祉」という文字と有効期限が表示されています。
使用方法・カードの更新方法
福祉割引用icscaの使用方法や更新方法は、以下の通りです。
カードの使用方法
福祉割引用icscaは、障害者本人のみ利用可能です。割引が適用される介護者・付添人(第一種の場合)は大人用icscaを使用し、有人改札で割引運賃を引き落としてもらいます。
仙台市地下鉄・市バスを利用する際には、手帳を提示することなく割引運賃が自動的に引き落とされます(手帳原本の携帯は必要です)。カードを自動改札機やカード読み取り機にかざせば大丈夫です。
このカードは、仙台市地下鉄・市バス、および宮城交通路線バスでのみ利用可能です。それ以外の交通機関では使用できないので注意しましょう。
カードの更新方法
福祉割引用icscaには1年間の有効期限があり、毎年更新する必要があります。購入時期や生年月日にかかわらず、有効期限は一律で毎年10月31日です。毎年10月1日以降に初めて使用する際に更新手続きを行います。
カードの更新手続きは、障害者手帳を持って交通局の定期券発売所またはバス営業所・出張所で行います。更新時に限り、地下鉄駅窓口でも手続きが可能です。
宮城交通の路線バスが関係する場合
宮城交通の路線バスに関しては、仙台市交通局とは割引条件が異なります。特に、精神障害者保健福祉手帳の場合、宮城県外発行の手帳では運賃が割引になりません。これは、この割引の趣旨が、住民の日常生活向けの支援であるためです。
そのため、福祉割引用icscaによる運賃の自動引き落としができません。運賃を支払うたびに手帳を提示し、icscaのチャージ残高から割引運賃分を引き落とす形になります。

宮城県外発行の精神障害者保健福祉手帳を割引対象外とする運用は、仙台を訪問する精神障害者にとって厳しいですね。
まとめ

仙台市内を走る仙台市営地下鉄や市バスには運賃の障害者割引制度があり、各障害者手帳を所持していれば割引を受けられます。
乗車するたびにきっぷを購入したり運賃を支払ったりする他に、割引運賃が自動的に引き落とされる「福祉割引用icsca」が発行されているため、利用するととても便利です。
障害者割引の適用条件は緩やかで、手帳の種類や発行自治体、種別・等級による適用条件の区別がありません。普通運賃の他、定期運賃も割引になります。
仙台市民であれば、所得制限にかからない限り「ふれあい乗車証」の利用が可能です。発行手数料がかからずに地下鉄・市バスが無料になります。
障害者本人が利用できる福祉割引用icscaには有効期限(一律で10月31日)が設定されており、毎年更新手続きが必要です。10月に入れば更新手続きが可能なので、混雑を避けて都合の良いタイミングで手続きするのがおススメです。
仙台市においては精神障害者保健福祉手帳所持者に対する適用条件の緩和が遅れていましたが、現在では他自治体よりもかえって充実しています。適用条件や割引内容に区別がなくなったことは、障害者差別解消法の理念や三障害の不公平解消の観点で望ましいと思います。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 仙台市ウェブサイト「ふれあい乗車証(バス・地下鉄の無料乗車証)の交付」2025.7閲覧
● せんだいくらしのガイド 令和6年度(仙台市)
● icscaご利用ガイド 2024年10月版(仙台市交通局)

当記事の改訂履歴
2025年7月11日:当サイト初稿(リニューアル)
2021年7月31日:前サイト初稿(原文作成)
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