障害者割引が適用された乗車券に表示された記号の意味は?手帳の種別を示す割引印章を解説

割引印章が印字された普通乗車券 福祉割引

障害者手帳を提示して購入した乗車券に、特定の文字や記号が表示されていることに気付いたことはありませんか。

これは、割引された乗車券を利用していることを示すもので、業務上「割引印章」と呼ばれています。駅員や乗務員がこの印章を見ることで、乗車券の使用資格をスムーズに確認することが可能です。

障害者割引には、障害者手帳の種類や種別によって9種類の割引印章があります。

介護者・付添人が同伴しているか本人のみで利用するか(単独旅行)によって割引条件が異なるため、割引印章を使い分ける必要が生じます。

乗車券を受け取った人にとっては、割引印章の意味が気になるはずです。

印章の種類にかかわらず、運賃の割引率(5割)には差がありません。業務上必要なために押印・印字されますが、ユーザーとしてはあまり気にする必要はありません。

この記事では、障害者割引が適用された乗車券に表示された割引印章の意味を解説します。割引の対象者や支援者がこの印章について理解するためのヒントになれば幸いです。

この記事から分かること
  • 鉄道会社や担当者によっては割引印章を厳密に使い分けていない場合があること
  • 割引乗車券を発行する代わりに小児用の乗車券を使用する鉄道会社があること
  • 割引印章の使用は鉄道会社の都合なので、あまり気にする必要がないこと

割引が適用された乗車券には印章が押される

割引印章が印字された普通乗車券

乗車券や特急券などの鉄道きっぷは、運賃や料金を割り引いて発売されることがあります。その場合、割引されたことが判別できるよう、割引の種類を記載した印章(割引印章)が押されます。

これは障害者割引に限らず、学割や営業施策上の割引も同様です。

たびら平戸口駅から佐世保駅ゆき普通乗車券

手売りのきっぷに関しては、このように手帳の種類や種別を示す割引印章が押されます。鉄道会社によっては割引印章に加え、携帯する手帳の番号があわせて記載されることがあります。

日光駅から大宮駅ゆき普通乗車券

大部分の鉄道会社では端末を用いて乗車券を発行しており、割引印章が自動的に印字されます。JR各社のマルス端末で発券された乗車券の場合、表示されるのは右下の部分です。

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障害者手帳の種類・旅客鉄道会社等旅客運賃減額欄の意味

障害者手帳に表示された旅客運賃減額欄

割引印章について十分に理解できるよう、障害者割引の対象者に関する区分をここで確認します。

障害者手帳の種類

運賃の割引を受けられる障害者手帳は、以下の3種類です。

  • 身体障害者手帳
  • 療育手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳

JR各社や多くの大手鉄道会社においては、2025年4月以降精神障害者保健福祉手帳の所持者に対する運賃の割引制度が導入されています。

精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃割引制度の導入については、以下の記事をぜひご一読ください。

割引条件を決める「旅客鉄道会社等旅客運賃減額欄」の種別

また、障害者手帳には必ず「旅客鉄道会社等旅客運賃減額欄」があり、いずれかの種別が表示されているはずです。これらの種別により、割引条件が異なります。

  • 第一種
  • 第二種

この表示がない場合、原則的に運賃の割引が受けられません。

第一種・第二種の種別が示す障害の程度

障害の等級や部位により、第一種か第二種のいずれかに区分されます。これらの区分は、障害者手帳の種類別にJR各社や各鉄道会社の規程に定められています。

身体障害者手帳

障害部位第一種
(本人及び介護者)
第二種
(本人のみ)
視覚障害1級から3級及び4級の14級の2、4級の3、5級及び6級
聴覚障害2級及び3級4及び6級
平衡機能障害(該当なし)3級及び5級
音声機能、言語機能又はそしゃく機能障害(該当なし)3級及び4級
肢体不自由(上肢)1級、2級の1及び2級の22級の3、2級の4及び3級から6級
肢体不自由(下肢)1級、2級及び3級の13級の2、3級の3及び4級から6級
肢体不自由(体幹)1級から3級5級
乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害(上肢機能)1級及び2級3級から6級
乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害(移動機能)1級から3級4級から6級
心臓、じん臓若しくは呼吸器又は小腸の機能障害1級、3級及び4級(該当なし)
ぼうこう又は直腸の機能障害1級及び3級4級
ヒト免疫不全ウィルス による免疫又は肝臓の機能の障害1級から4級(該当なし)

療育手帳

第一種
(本人及び介護者)
第二種
(本人のみ)
ア 知能指数がおおむね35以下の者であって、日常生活において常時介護を要する程度のもの
イ 肢体不自由、盲、ろうあ等の障害を有し、知能指数がおおむね50以下の者であって、日常生活において常時介護を要する程度のもの
左記以外の知的障害者

精神障害者保健福祉手帳

第一種
(本人及び介護者)
第二種
(本人のみ)
1級2級・3級
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運賃の障害者割引に関する適用条件

高崎線普通列車籠原駅にて

障害者手帳上の旅客鉄道会社等旅客運賃減額欄に記載された種別により、運賃割引の条件が異なります。ここでは、主な条件に絞ってご説明します。

介護者・付添人同伴(第一種)

介護者・付添人が同伴する場合に限り、本人を含め以下の券種が5割引となります。

  • 普通乗車券
  • 普通回数乗車券
  • 定期乗車券

12歳未満の第二種障害者に介護者・付添人が同伴する場合、普通乗車券に加え、介護者が使用する定期乗車券も割引で購入可能です。

単独利用(第一種・第二種)

第一種・第二種を問わず、本人だけで利用する場合は、普通乗車券に限り5割引となります。ただし、片道の営業キロが101km以上であることが適用条件です。

乗車区間の営業キロが100km以下となる場合であっても、101km以上の区間の普通乗車券を購入した方が低額となる場合があります。そのしくみについては、以下の記事をご一読ください。

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障害者割引に関する割引印章の一覧・実例

障害者割引が適用される乗車券の右下に押される割引印章については、以下の区分により9種類の印章が存在します。

  • 障害者手帳の種類
  • 介護者・付添人が同伴するか本人のみの利用か
手帳種別本人単独同伴
(本人)
同伴
(付添人)
身体
知的
精神

単独旅行の場合に使用される割引印章を、3種類とも入手できました。ここで、それらの発券実例をご紹介します。

身体障害者手帳の割引印章実例

身体障害者手帳用割引印章

身体障害者が本人のみで利用する場合に使用されるのが、○身(身を白丸で囲む)の印章です。JR各社のマルス端末では[身割]と印字されます。

日光駅から大宮駅ゆき普通乗車券

身体障害者手帳以外の手帳を提示した場合であっても、身体障害者手帳用の割引印章を使用する鉄道会社があります。また、担当者によっては割引印章を厳密に使い分けず、手帳の種類と異なる印章を用いるケースが見られます。

療育手帳の割引印章実例

療育手帳用割引印章

療育手帳を所持する知的障害者が本人のみで利用する場合に使用されるのが、○療(療を白丸で囲む)の印章です。JR各社のマルス端末では[療割]と印字されます。

大宮駅から敦賀駅ゆき普通乗車券

精神障害者保健福祉手帳の割引印章実例

精神障害者保健福祉手帳用割引印章

精神障害者が単独利用する場合に使用されるのは、○健(健を白丸で囲む)の印章です。JR各社のマルス端末では[健割]と印字されます。

小田原駅から宮原駅ゆき普通乗車券

精神障害者保健福祉手帳については、JR各社で割引適用が始まったのは最近です。そのため、先行して割引制度が導入された他の鉄道会社では異なる印章が用いられています(○精など)。

小児用乗車券を代用することも

障害者割引の割引率は5割引と、小児と同じです。したがって、割引乗車券と小児券は同額です。

そのため、鉄道会社によっては割引用の乗車券を発行せず、小児用の乗車券を割引乗車券として代用しています。

近距離用券売機で購入できるのは、一般的には営業キロが100km以下の乗車券です。介護者・付添人が同伴する場合(第一種)は乗車距離に関係なく割引が適用されるため、小児用乗車券を2枚購入し乗車するケースが想定されます。

六日町駅から十日町駅ゆき普通乗車券

これは、筆者が実際に購入した割引乗車券です。手帳を提示したにもかかわらず、小児用の乗車券を渡されました。

子供用の乗車券を故意に購入し、悪意を持って使用したと疑われることがあるのが小児券代用の難点です。

「子供用の乗車券をわざと買って使ったのでは?」と誤解される可能性があるわけですが、これは鉄道会社の都合によるものなので、心配には及びません。

このような場合には、駅員や乗務員に手帳を提示しましょう。

割引印章をあまり気にしなくてもよい

障害者割引が適用される場合、いかなる適用条件であっても普通乗車券の割引率は同一で、値段も同額です。したがって、手帳の種別や同伴の有無といった情報を基に割引印章を使い分けるのは、単に鉄道会社側の業務上の都合です。

乗車券を発売する担当者によっては、本来押すべき印章と異なる種類の印章を押すことがあります。また、鉄道会社によっては割引印章を使い分けない場合があります。

手帳を提示して乗車券を購入するユーザーとしては、自分の手帳と異なる割引印章を押されてもあまり神経質になる必要はないでしょう。

逆に考えると、乗車券面に記載される割引印章によって、どの手帳を所持しているか推測されてしまいます。障害者のプライバシー確保の観点からは、割引印章の厳密な使い分けはあまり望ましくないかもしれません。

まとめ

割引印章が印字された普通乗車券

障害者割引で乗車券を購入した際、券面に表示される割引印章は、障害者手帳の種類や、介護者・付添人の有無など、利用形態を鉄道会社が把握するための目印です。

全部で9種類の印章がありますが、印章の種類によって割引率が変わることはありません。

また、鉄道会社によっては、小児用の乗車券で代用したり、割引印章を厳密に使い分けていなかったりするケースもあります。これらはあくまでも鉄道会社側の都合によるものなので、あまり気にしなくても大丈夫です。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第188条(旅客運賃・料金の割引等に対する表示)

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程第188条(旅客運賃及び料金の割引等の印章)

● 旅客鉄道株式会社 身体障害者旅客運賃割引規則 2025.4

● 旅客鉄道株式会社 知的障害者旅客運賃割引規則 2025.4

● 旅客鉄道株式会社 精神障害者旅客運賃割引規則 2025.4

● JR旅客営業制度のQ&A(自由国民社)2017.5

当記事の改訂履歴

2025年7月23日:当サイト初稿

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