沖縄県の県庁所在地・那覇市を走る「ゆいレール」は、沖縄県民の生活基盤であるだけでなく、沖縄への訪問者にとっても重要な公共交通機関です。
ゆいレールにおいては、障害者手帳の所持者に対する運賃の割引制度が導入されています。その制度の対象には精神障害者保健福祉手帳が含まれており、すべての当事者にとって優しい対応です。
割引運賃の支払いには、現金の他、全国版の各種交通系ICカードを利用できます。それに加え、沖縄本島ローカル版の交通系ICカード「OKICA(オキカ)」には、障がい者用カードが設定されています。割引運賃が自動的に適用されるために非常に便利で、筆者にとっても欠かせません。

沖縄訪問をリピートする場合、OKICA障がい者用カードを作っておくと、那覇空港と那覇市街との往来や路線バスの利用が大変スムーズです。1枚持つことをおススメします!
この記事では、沖縄本島での移動に欠かせない「ゆいレール」における障害者運賃割引制度の概要および利用方法を解説します。あわせて、沖縄本島だけで利用できるローカル版交通系ICカード「OKICA」の障がい者用カードの購入方法・更新方法についても触れます。
手帳の発行自治体が問われないため、沖縄を訪問する人にもこの割引制度を活用していただきたいです。
- ゆいレールのみに有効な一日乗車券には障害者割引が適用されないこと
- 「バスモノパス」には障害者割引があるものの、料金設定がいくぶん割高なこと
- 「OKICA障がい者用カード」には有効期限があり、毎年更新が必要なこと
「ゆいレール」の概要・運賃の支払手段

ゆいレールにおける障害者手帳所持者向け運賃割引制度の詳細を説明する前に、ゆいレールの概要についてお話しします。
ゆいレールの概要
「ゆいレール」は、那覇空港駅(沖縄県那覇市)から那覇市中心部や首里駅を経て、終点の「てだこ浦西」駅(沖縄県浦添市)まで17.0kmの区間を結ぶ路線です。沖縄県では唯一の鉄道であり、同時に日本最南端を走る鉄道でもあります。
「ゆいレール」というのは愛称で、正式には「沖縄都市モノレール」と言います。
ゆいレールは、2003年に開業した比較的新しい路線です。公共交通機関として利用が定着し、混雑が激しいため、2両編成から3両編成への増備が進んでいます。
ゆいレールの各駅にはエレベーターなどのバリアフリー設備が完備しており、障がいを持っていても安心して利用できます。全区間が高架線で、車窓の風景がとてもステキです。
日常生活を送る沖縄県民ばかりでなく、用務や観光で沖縄を訪問する人にとっても頼りになる存在ではないでしょうか。
ゆいレールにおける運賃の支払方法・QR乗車券の使い方
ゆいレールにおける運賃の支払方法は多様で、以下の方法があります。
- 現金で紙のきっぷを購入
- フリーきっぷを購入
- 全国版各交通系ICカードを利用
- 沖縄ローカル版ICカード「OKICA」を利用
ゆいレールでは、QR乗車券が早い段階で導入されています。紙のきっぷ(普通乗車券および一日乗車券)を利用する際、自動改札機に磁気券を入れるのではなく、きっぷに表示されたQRコードをかざします。QR乗車券は全国的にも普及が進みそうですが、ゆいレールはその先駆けです。

紙のきっぷを買ってから自動改札機を通る時には、QRコードが表示されている面を裏返しにして、自動改札機に読み込ませます。出場の際自動改札機を通る方法も同様です。
きっぷは回収されないので、持ち帰りは自由です。不要な場合は、自動改札機にある回収のためのきっぷ入れに入れましょう。
紙のきっぷを買って乗車するだけではなく、沖縄本島内で利用できる交通系ICカード「OKICA」も利用できます(2014年に導入)。
2020年以降、全国版の各交通系ICカード(Suica・PASMO・ICOCAなど)も、ゆいレールで利用可能です。
ゆいレールにおける障害者割引制度の詳細

ゆいレールにおいて実施されている障害者手帳所持者向け運賃割引制度の詳細は、以下の通りです。
精神障害者保健福祉手帳所持者に対しても、2006年1月以降割引制度が導入されています。精神障害者に対する鉄道運賃の割引は、ゆいレールが先駆けと言えるでしょう。
対象者
障害者手帳を所持する人が、運賃割引の対象者です。本人の他、介護者・付添人1名が割引になります。
ゆいレールにおいては、手帳の種類や種別(第一種・第二種)、発行自治体による割引条件には差がありません。手帳を所持さえしていれば、条件の差なく割引を受けられます。
対象区間・設備
ゆいレール(沖縄都市モノレール)全区間が、運賃割引の対象です。ゆいレール以外にも、沖縄本島内を走る路線バスも割引対象で、障がい者用OKICAで割引を受けられます。
割引率
割引率は、一律で50%です。
普通乗車券・定期乗車券が50%割引になる他、ゆいレールと那覇バスが1日乗り放題の「バスモノパス」も大人料金の半額になります。

運賃の障害者割引の内容が分かったところで、きっぷの買い方やICカードの使い方について説明を続けていきます!
紙のきっぷを利用する方法

ゆいレールにおいては、乗車1回ごとに購入する普通乗車券および「バスモノパス」というフリーきっぷに障害者割引が適用されます。
ゆいレールのみ1日乗り放題の一日乗車券については、障害者割引の対象外です。
普通乗車券の購入・使用方法
最も基本的なのは、紙のきっぷ(普通乗車券)を利用する方法です。
ゆいレールの場合、障害者割引が適用された普通乗車券は、自動券売機の他、改札口で駅員から購入できます。

各駅のきっぷうりばには、このような券売機が配置されています。

自動券売機で普通乗車券を購入するには、タッチパネルの隣にある「福祉」(ふくし)ボタンを押しますが、その際駅員を呼び出す形になります(券売機から大きな音が出ますが驚かないでくださいね)。

駅によっては駅員が常駐しておらず、きっぷうりばにインターホンが設置されています(写真右方)。割引きっぷを購入するにはインターホンに手帳を置き、遠隔で確認してもらいます。
お気づきかもしれませんが、券売機で福祉ボタンを押すにせよ、改札口で普通乗車券を購入するにせよ、その時に駅員に手帳を提示します。有人駅であれば改札口にいる駅員に直接声をかけるのが、一番シンプルな方法ではないでしょうか。

障害者割引が適用された普通乗車券には、黒丸で(割)と表示されています。

自動改札を通る時には、きっぷを裏返し、券面に表示されたQRコードをQRコードリーダーに読み込ませます。
「バスモノパス」の購入・使用方法
那覇市内を一日かけてめぐる場合、一日乗車券の利用をおススメします。
ゆいレールのみ乗車できる一日乗車券には障害者割引はありませんが、那覇バスの全区間とゆいレールの全区間が1日乗り放題(暦日で1日)の「バスモノパス」には障害者用の割引があるのです(割引後の大人料金は750円)。
一日乗車券に障害者割引が適用されるのはまれですが、このパスは非常に珍しいケースであると言えるでしょう。

割引料金の「バスモノパス」は、ゆいレールの改札口で購入できます。
実際に利用を開始するには、券面をスクラッチして利用日を表示します。大人用の券に割引が適用された形です。
ただし、コスパの面では要注意です。ゆいレールの全区間、那覇空港駅・てだこ浦西駅間の割引運賃が200円であることを考慮すると、750円の元を取れるかどうか、慎重に検討してから購入するとよいでしょう。
全国版交通系ICカードを利用する方法

沖縄県民以外の訪問者にとっては、日頃使い慣れた全国版の各交通系ICカードを利用できると便利です。
ゆいレールの自動改札は、モバイルSuica・PASMO・ICOCAを含む全国版交通系ICカードにも対応しています。手帳を提示して運賃の割引を受ける場合であっても、交通系ICカードでの精算が可能です。
入場時には、大人用のICカード・スマートフォンを自動改札機にタッチします(入場時の申告や設定は不要)。出場時には有人改札で手帳を提示し、駅員に割引運賃分の引き落とし処理を依頼します(小児用ICカードも同様です)。
障害者割引に関しては交通系ICカードの使用を認めない鉄道会社が多い中、この対応はありがたいです。
なお、ゆいレール以外の路線バスでは、全国版交通系ICカードを利用できません。

路線バスを利用する場合、沖縄本島ローカル版のICカード「OKICA」障がい者用カードを持つと断然便利です!これから、その詳細をお話しします。
「OKICA障がい者用カード」の購入・使用方法

ゆいレールの運賃を支払う方法として、沖縄本島ローカル版交通系ICカード「OKICA」の障がい者用カードを作る方法もあります。筆者も、現地で実際に作り、活用しています。
OKICA障がい者用カードのメリデメ
沖縄本島内だけで利用可能な地域限定の交通系ICカードが、「OKICA」です。ゆいレールの他、路線バスの運賃支払いや電子マネーとしての利用が可能です。
訪問者が利用する場合、本土では利用できない点に留意する必要があるものの、沖縄訪問の良い記念になるのではないかと思います。
OKICAが利用可能な路線バス事業者:那覇バス・沖縄バス・琉球バス交通・東陽バス
このカードには、大人用カードだけではなく、記名式の「障がい者用カード」があります。障がい者用カードを持てば、手帳を毎回提示する必要がなく、出場時の処理も必要なく、自動的に割引運賃が差し引かれるのです。
OKICAに関しては、大人用の障がい者用カードのみならず、障害者手帳を持つ小学生に対して「小児障がい者用カード」が発行されています。
メリット
- 普通乗車券購入やICカードの出場処理の手間と時間が節約可能
- ゆいレールの他、沖縄本島内を走る路線バスでも、手帳の提示なしに運賃割引を受けられる
- ゆいレールで1駅間だけ乗車する場合「おとなり割引」が適用される
- 障がい者用カードであっても、OKICAポイントが付与される
デメリット
- 地域限定の交通系ICカードであり、沖縄本島以外の他のエリアで使用できない
- 使い終わって残高が余った際の払いもどしに手間がかかる
デメリットを考慮しても、ゆいレールや路線バスに何回も乗車する場合は、スムーズに乗り降りできるOKICA障がい者用カードがおススメです。
OKICA障がい者用カードの購入方法
ゆいレールの有人駅やバス会社の営業所(OKICA取扱事業所)で障害者手帳を提示して、障がい者用カードを購入します。障がい者用カードは記名式であり、新規購入時には氏名、生年月日、電話番号といった個人情報の提供が必要です。
障がい者用カードを含め、OKICAについては、以下の初期費用で作れます。
デポジット500円 + 運賃チャージ分500円 = 1,000円
OKICA障がい者用カードの使用方法
ICカード表面の左部には[割]と表示され、割引カードだと分かります。

ゆいレールの自動改札を通る場合、このカードをタッチすれば割引運賃が自動的に引き落とされます(手帳は常に携帯しましょう)。
前払い方式の路線バスに乗車する場合、乗車時に運賃箱の上にあるICカードリーダーにICカードをタッチします。
後払い方式の路線バスを利用する場合、乗車時にはICカードを整理券の隣にあるICカードリーダーにタッチします。降車時には、ICカードを運賃箱上のICカードリーダーにタッチします。
沖縄本島のバスは乗降とも前扉なので、ICカードをタッチする場所に気を付けてください。

ゆいレール各駅の券売機で、利用履歴の確認・印字が可能です。
OKICA障がい者用カードの有効期限・更新方法
OKICA障がい者用カードには有効期限があり、定期的な更新が求められます。カードの有効期限は毎年の「誕生日」です。誕生日の1か月前から更新手続が可能になります(ただし、初回購入時のみ次々回の誕生日まで有効)。
有効期限を更新するには、使用中のOKICA障がい者用カードと障害者手帳をOKICA取扱事業所(ゆいレールの有人駅やバス会社の営業所など)に持参し、手続を行いましょう。
もし更新手続きを忘れて有効期限が過ぎてしまっても、安心してください。そのカードは一時的に使えなくなりますが、後日改めて更新手続を行えば、再び利用できるようになります。例えば、沖縄を定期的に訪問する場合、那覇空港に到着した際にゆいレール那覇空港駅で更新手続きを済ませれば、問題なく利用再開が可能です。
まとめ

沖縄県の県庁所在地・那覇市の市街地を走る「ゆいレール」には、運賃の障害者割引が導入されています。精神障害者保健福祉手帳所持者にも2006年から割引が提供されましたが、これは精神障害者に対する運賃割引制度の先駆けです。
券売機や改札口で普通乗車券を購入するのみならず、全国版の交通系ICカードを利用して精算したり、沖縄本島版交通系ICカード「OKICA障がい者用カード」を利用したりして、運賃の割引を受けられます。
ゆいレールの他、路線バスを利用する場合は、OKICA障がい者用カードを作ると特に便利です。路線バスにおいては全国版の交通系ICカードが利用できないため、乗車するたびに手帳を提示して現金で運賃を支払うのは大変だからです。
OKICA障がい者用カードには有効期限が設定されており、毎年誕生日に有効期限が切れます。誕生日の1か月前から誕生日までに更新手続が必要です。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● ゆいレールウェブサイト(沖縄都市モノレール)2025.7閲覧
● 沖縄を楽しく快適に!沖縄ICカードOKICA 2025.7閲覧
● OKICAご利用ガイド(沖縄ICカード株式会社)2025年3月版
当記事の改訂履歴
2025年7月30日:初稿 最新更新
2025年7月28日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年3月16日:前サイト第2稿
2015年8月31日:前サイト初稿(原文作成)
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