日本統治時代に整備された台湾鐵路(台鐵)の施設は、現在では多くが近代化されています。しかし、その貴重な鉄道遺産が当時の姿のまま残されている場所があります。それが、台湾中部の彰化市にある「彰化駅扇形車庫」です。
この扇形車庫は整備された当時の面影を色濃く残す貴重な鉄道施設で、いまだに現役で稼働しています。台湾唯一の扇形車庫として国定古跡(日本の重要文化財や史跡に相当)にも指定されており、誰でも無料で見学が可能です。
日本では見られなくなった鉄道施設の古いたたずまいを感じたく、筆者もはるばる彰化駅扇形車庫を訪問しました。

彰化駅扇形車庫には、台北からの日帰りが十分可能です。台湾高鐵(新幹線)や台鐵「自強」号に乗車すれば、時間的には余裕でしょう。訪問する際には、パスポートなどの身分証をお忘れなく。
この記事では、「彰化駅扇形車庫」の概要と、主要都市からのアクセス方法を解説します。筆者が現地を訪問した際の様子をご覧いただき、彰化駅扇形車庫訪問のイメージをつかんでいただければ幸いです。
- 台湾に現存する日本統治時代の貴重な鉄道遺産であること
- 現役で稼働する台湾唯一の扇形車庫に入構し、間近で見学できること
- 彰化駅から扇形車庫までは十分に歩ける距離であること
昔懐かしい台鐵の光景を「彰化駅扇形車庫」で体感!

台湾全土を結ぶ台鐵の整備が始まったのは日本統治時代の19世紀末で、1908年に全線開通しました。それからすでに100年以上経っています。大部分の区間が電化され、車両が更新された現在においても、いまだに懐かしい雰囲気が残っています。
その中でも、整備が始まった当時のたたずまいを保っているのが、台湾中部の彰化市にある「彰化駅扇形車庫」です。扇形車庫として整備された当時の機関庫が現在でもそのまま利用されており、日本では失われてしまった昔懐かしい鉄道の光景を感じ取れます。
彰化駅扇形車庫は、機関車を効率的に格納・整備するために転車台を中心に放射状に車庫を配置した、当時の最先端の鉄道施設でした。特に蒸気機関車は、方向転換や給水・給炭などの作業が必要不可欠だったため、扇形車庫のような機能的な施設は鉄道網を維持する上で重要な役割を担っていました。
館内に敷かれた線路は実際に営業している線路と直結しており、機関車は転車台に乗って移動します。歩いて回れる構内では、この転車台を間近で見られるのです。
昔ながらの機関庫には最新型のディーゼル機関車が入庫することがあり、新旧のギャップが興味深いです。蒸気機関車からディーゼル機関車へと主役が交代した後も、この扇形車庫の構造は変わることなく、今も現役で多くの機関車が整備されています。
業務で利用されている現役の鉄道施設でありながら、日本の重要文化財や史跡に相当する台湾の国定古跡に指定されているため、誰でも内部を見学できます。昔ながらの鉄道施設やその雰囲気を体感したい人にとっては、彰化駅扇形車庫への訪問が欠かせません。
彰化駅扇形車庫の概要・開放時間・入構料金

彰化駅構内にある彰化駅扇形車庫は、1922年に建設された歴史ある鉄道施設です。扇形に広がった車庫と中央に設置された転車台が特徴で、蒸気機関車やディーゼル機関車の向きを変えたり、入庫・出庫を行ったりするために使用されてきました。
彰化駅扇形車庫は現在、國營臺灣鐵路股份有限公司(国有台湾鉄道株式会社)が管理しています。年代が感じられるディーゼル機関車や一部の保存車両が収容されている姿は、まさに圧巻です。
入構時間
土曜休日は午前中から入構が可能ですが、平日(火曜から金曜)は午後からに限定されるため、旅程の立て方に注意しましょう。
- 月曜日:休館
- 火曜日~金曜日:13時00分-16時00分
- 土曜日・休日:10時00分-16時00分
入構料金・入構方法
入構料金は無料ですが、受付では代表者が氏名と入構時刻を記入する必要があります。身分証明書の提示は必ずしも求められませんが、念のためパスポートを持参しましょう。
彰化駅扇形車庫への鉄道での行き方

縦貫線の海線と山線が合流する彰化駅は、台鐵の一大拠点です。彰化駅扇形車庫が鉄道施設であることから、やはり鉄道を利用して訪れるのが最適でしょう。
彰化駅は、台湾第二の都市である台中市から近く、台北市からの交通アクセスも決して悪くありません。台北市からは、日帰りが十分可能な距離です。
台湾各地から彰化駅までの行き方
台湾各地から彰化駅に向かうには、台鐵を利用します。ここでは、台北駅および台中駅からの行き方をご説明します。

台北駅から彰化駅まで
台北駅から彰化駅へは、台湾高鐵(新幹線)を利用する方法と、在来線の台鐵縦貫線を利用する方法があります。
● 台湾高鐵(新幹線)を利用する方法
高鐵台北駅から約1時間の高鐵台中駅で、台鐵縦貫線(山線)に乗り継ぎます。高鐵台中駅に接続する台鐵新烏日駅から台鐵彰化駅までは、区間車(普通列車)で約15分です。
● 台鐵縦貫線(海線・山線)を利用する方法
台北駅から「自強」号に乗車すれば、乗り換えなしで彰化駅まで向かうことができます。速達タイプの列車で2時間10分程度です。山線経由、海線経由のいずれの列車も彰化駅を通るため、誤乗の心配はないでしょう。
台中駅から彰化駅まで
台中駅から彰化駅までは、台鐵縦貫線(山線)で17.6kmです。「自強」号に乗車すれば15分程度、区間車に乗車すれば20分程度で到着します。
台鐵「自強」号の乗り方については、以下の記事をぜひご一読ください。
彰化駅から扇形車庫までの行き方
彰化駅は、広い駅構内の北西端に位置します。
地図を見る限り駅に隣接しているように見えますが、彰化駅から扇形車庫までの行き方が案外分かりにくいです。

彰化駅の地上駅舎は東側にあり、線路の反対側にある扇形車庫に向かうには線路を渡らなければなりません。現在は駅を東西に結ぶ自由通路があるため、アクセスが楽になっています。

駅舎の左手(北側)にある自由通路(跨線橋)を西に向かい、階段を下りたら線路沿いに北へ600mほど歩くと扇形車庫の入口に至ります。

ほとんどが歩行者専用の道なので、安心して歩けます。駅から扇形車庫の入口まで、ゆっくり歩いても15分程度です。
彰化駅扇形車庫を訪問!
実際に歩いてみると不安は吹き飛び、とても簡単に扇形車庫の入口に到着しました。

扇形車庫は台鐵が所有する施設で、いまだ現役で稼働しています。入構する際、受付で氏名と入構時刻を記入します。筆者が訪れた時にはパスポートの提示は求められませんでしたが、念のため持参したいです。

中に進むと、まずディーゼル機関車が見えてきます。赤い線より先には進めません。

そして、転車台に入ります。現在も稼働しています。

扇形車庫には、新旧のディーゼル機関車が入庫しています。京都鉄道博物館にある梅小路機関車庫と同じ構造です。

転車台からは、彰化駅構内に線路がそのまま伸びています。

展望スポットに登ると、車庫を見下ろせます。

別のアングル。彰化駅まで見渡せます。

車庫には、日本のC12形蒸気機関車と同型の「CK124」が保存されています。1936年に製造されたこの機関車は、台湾各地で客車や貨車を牽引して活躍しました。1979年に台鐵での営業運転を終了した後も、動態保存機としてイベント列車を牽引することがあり、台湾の鉄道ファンに今も愛されている機関車です。
車庫に並んだ機関車の背後には、それぞれに専用の検修・整備スペースが設けられています。これは、扇形車庫が単なる機関車の「駐車場」ではなく、日々の点検や修理を行うための「工場」としての役割も担っていることを示しています。
ゆっくり回っても、30分程度で見学が終わります。見学が終わったら、入口とは反対方向にある出口に向かいます。出口にはお土産屋があり、休憩が可能です。
まとめ

台湾中部の彰化市にある「彰化駅扇形車庫」には、日本統治時代からの鉄道遺産が当時の姿のまま残されています。当時の面影を色濃く残しながらも、現役で稼働する鉄道施設です。
台湾における国定古跡に指定されているため、誰でも構内を見学できます。
この車庫は國營臺灣鐵路股份有限公司(国有台湾鉄道株式会社)によって管理されており、休館日の月曜日を除く平日13時から16時までの間、土曜休日は10時から16時の間開放されています。入構料金は、無料です。
彰化駅扇形車庫には、台北市から十分日帰りが可能です。台湾高鐵(新幹線)と台鐵縦貫線(山線)を利用すれば1時間30分程度で着きます。また、台北駅から「自強」号に乗車すれば、速達タイプの列車で2時間10分程度で着きます。
入構する際は、受付で代表者が氏名と入構時刻を記入します。構内を見て回るのに必要な所要時間は、ゆっくり回っても30分程度です。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 台鐵ウェブサイト 2025.8閲覧
● 台湾鉄道途中下車の旅(台湾観光庁)2024.4
● 鉄道で楽しむ台湾 ダイジェスト版(台湾観光庁)2024.9
当記事の改訂履歴
2025年8月02日:当サイト初稿(記事分離)
2025年01月22日:当サイト元記事 初稿
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