【北海道・東北地区】精神障害者保健福祉手帳所持者に対する鉄道運賃割引の事業者別実施状況一覧

仙台市地下鉄八乙女駅 福祉割引

精神障害者保健福祉手帳を所持していれば、多くの公共交通機関で運賃の割引を受けられます。その対象は従来、身体障害者手帳や療育手帳に限られていましたが、現在はほとんどの鉄軌道事業者で対象となりました。

精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃割引制度の導入に関して、政府(国土交通省)から各事業者に働きかけられてきました。しかし、当該制度を導入するか否かを最終的に決めるのは、各事業者に委ねられています。

そのため、手帳による運賃割引制度の導入状況には各事業者でばらつきがあるのが現状で、当事者・家族・支援者にとって情報の把握が困難です。

そこで、精神障害者保健福祉手帳所持者であり、同時に旅行実務の経験者でもある筆者が、各事業者の最新割引状況をまとめました。

北海道においては、精神障害者に対する割引制度導入が身体障害者や知的障害者よりも遅れ気味です。一方、東北地区各県においては手帳種別の区別なく、ほぼすべての事業者に割引制度が導入されています。

この記事では、北海道地区または東北地区に本社がある鉄軌道事業者に関し、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃割引の実施状況をご説明します。

介護者・付添人が同伴せず一人で利用する場合(単独旅行)、割引条件に距離制限が伴う場合があります。当記事では、その条件を実務目線でばっちり記載しました。

この記事から分かること
  • 函館市電(函館市企業局)においては、精神手帳による割引が実施されていないこと
  • 連絡運輸の設定範囲内であれば、JR線への連絡乗車券も割引で購入可能なこと
  • 仙台市地下鉄・市バスでは、icsca(イクスカ)障害者用カードを利用できること

割引実施が進まぬ北海道と割引制度がほぼ完備された東北地区

精神障害者保健福祉手帳所持者への運賃割引制度の導入が全国的に進む中、北海道地区と東北地区においてその状況はどうでしょうか。

全国的に見ても割引制度の導入が遅いのが、北海道地区です。身体障害者手帳および療育手帳所持者への割引制度が完備している一方、精神障害者保健福祉手帳所持者への制度導入が鈍い感じが否めません。

現在ではJR北海道において割引制度が導入されましたが、事業者によっていまだに温度差があるのが現状です。

東北地区に関しては運賃割引制度の導入が進んでおり、ほぼすべての鉄軌道事業者において導入が完了しています。

第一種の手帳所持者が介護者・付添人と同伴で利用する場合には一部の例外を除き割引制度が完備しているのに対し、一人で利用する場合には適用外の場合があることに注意が必要です。

これから、各鉄軌道事業者別の運賃割引状況を挙げていきますが、各社のウェブサイト上に掲載されている情報を基準としたことに留意してください。

精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃の割引制度が拡大する中、各事業者の導入状況は随時変化します。当記事では最新情報の更新に努めていますが、利用する際にはご自身でも最新状況の確認をお願いします。

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北海道・東北地区における鉄軌道事業者別割引実施状況

北海道および東北6県における鉄軌道事業者の数は、東京都に本社があるJR東日本を除き、17社局です。精神障害者保健福祉手帳による運賃割引制度の導入状況を、道県別に見ていきましょう。

北海道

北海道内に本社が所在する鉄軌道事業者は、下表の通り5社です。その中でも、札幌市交通局と札幌市交通事業振興公社は実質的に同じ事業者であるため、4社と考えるとよいでしょう。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
1北海道北海道旅客鉄道(JR北海道)単独101kmなし 
2北海道札幌市交通局制限なしSAPICA(身体・知的のみ)精神はSAPICA利用不可・在住者向け助成制度あり
3北海道道南いさりび鉄道×割引対象外なしR7.4開始
4北海道札幌市交通事業振興公社(路面電車)制限なしSAPICA(身体・知的のみ)精神はSAPICA利用不可・在住者向け助成制度あり
5北海道函館市企業局交通部(函館市電)××割引対象外なし在住者向け利用助成あり

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

北海道旅客鉄道(JR北海道)

JR北海道においては2025年4月以降、精神障害者保健福祉手帳所持者への割引制度が全国基準で実施されています。道外から訪問しても、適用範囲に戸惑うことはないでしょう。

札幌市交通局・札幌市交通事業振興公社

札幌市交通局および札幌市交通事業振興公社(地下鉄・路面電車)では、従来から精神障害者保健福祉手帳所持者への割引が提供されてきました。ただし、地下鉄では紙のきっぷを購入し、路面電車では現金で運賃を支払う必要があります。

札幌圏限定の交通系ICカード「SAPICA(サピカ)」には障害者用カードが設定されていますが、精神障害者保健福祉手帳についてはあいにく利用対象外です。中央バスに精神障害者割引が一向に導入されない影響が、このカードに及んでいます。

道南いさりび鉄道

道南いさりび鉄道では2025年以降、精神障害者保健福祉手帳所持者への割引が開始されました。ただし、第一種(介護者・付添人同伴)のみが対象です。

函館市企業局(函館市電)

函館市電においては、市民に対する交通費の助成制度がある一方、精神障害者保健福祉手帳による運賃割引が実施されていません。函館市外在住者は、市電運賃の割引を受けられないことになります。

青森県

青森県内に本社が所在する鉄軌道事業者は、弘南鉄道、青い森鉄道および津軽鉄道の3社です。青い森鉄道線は、岩手県内を走るIGRいわて銀河鉄道線に乗り入れています。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
6青森県弘南鉄道制限なしなし最低運賃適用あり
7青森県青い森鉄道制限なしなし連絡運輸も割引対象(IGR:距離制限なし・JR線:100km超)
8青森県津軽鉄道制限なしなし本人のみ割引・最低運賃適用あり

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

弘南鉄道

弘南鉄道では精神障害者保健福祉手帳所持者に対し全面的に運賃割引が実施されており、全区間が対象です。第一種手帳所持者が介護者・付添人同伴で利用するのはもちろん、単独利用であっても距離制限なく割引が適用されます。割引後の運賃が最低運賃を下回ることがないことに留意したいです。

津軽鉄道

津軽鉄道も同様に、全区間で割引が適用されています。ただし、介護者・付添人同伴であっても割引が適用されるのは本人分のみです。

青い森鉄道

青い森鉄道においても、全区間で割引対象です。介護者・付添人同伴はもちろん、単独利用でも線内に関しては距離制限がありません。

IGRいわて銀河鉄道線およびJR線と連絡運輸となる場合であっても、割引の対象です(連絡運輸設定範囲内に限る)。単独利用の場合、JR線連絡となる場合は全乗車区間の距離が100kmを超えることが割引条件ですが、IGR線との2社連絡の場合には距離制限はありません

岩手県

岩手県内に本社がある鉄軌道事業者は、IGRいわて銀河鉄道および三陸鉄道です。IGRいわて銀河鉄道線は、青森県を走る青い森鉄道線に乗り入れています。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
9岩手県IGRいわて銀河鉄道制限なしなし連絡運輸も割引対象(青い森:距離制限なし・JR線:100km超)
10岩手県三陸鉄道制限なしなし 

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

IGRいわて銀河鉄道

IGRいわて銀河鉄道においては、全区間で割引制度が実施されています。線内および乗り入れ先の青い森鉄道線を一つの路線として考えることが可能です。

第一種手帳所持者が介護者・付添人同伴で利用するときはもちろん、単独利用であっても距離制限がありません。JR線連絡に関しては、乗車区間の全距離が100kmを超える場合に限って割引が適用されます(連絡運輸設定範囲内に限る)。IGRいわて銀河鉄道線・青い森鉄道線の2社連絡の場合、距離制限はありません

三陸鉄道

三陸鉄道線については、乗車区間や手帳区分による条件に関わらず、全区間で割引が適用されます。JR線連絡となる場合、単独利用の場合には全乗車区間の距離が100kmを超えることが条件です。

宮城県

宮城県内においては、仙台空港鉄道および仙台市交通局の2社局が手帳による割引制度を実施しています。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
11宮城県仙台空港鉄道×割引対象外なし 
12宮城県仙台市交通局制限なしicsca(制限なし)在住者向け無料乗車証あり

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

仙台空港鉄道

仙台空港鉄道については、第一種手帳所持者が介護者・付添人同伴の場合のみ乗車距離に関係なく割引が適用されます。単独利用の場合、割引は適用されません。

仙台市交通局

一方、仙台市交通局が運営する地下鉄および市バスにおいては、手帳種別や乗車距離にかかわらず、全区間で割引が実施されています。仙台市民は福祉制度により乗車証が発行される場合があるため、手帳による割引を受けられるのは実質的に仙台市への訪問者に限定されます。

仙台市交通局における手帳割引制度に関しては情報量が多いため、別記事にて詳しく解説しています。以下の記事をぜひご一読ください。

秋田県

秋田県内には鉄軌道事業者が2社あり、秋田内陸縦貫鉄道と由利高原鉄道が手帳割引制度を導入しています。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
13秋田県秋田内陸縦貫鉄道単独101kmなし単独は連絡運輸のみ(JR線:100km超)
14秋田県由利高原鉄道制限なしなし 

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

秋田内陸縦貫鉄道

秋田内陸縦貫鉄道に関しては、地方鉄道で見られる制限なしの割引実施ではなく、単独利用についてJR各社並みの制限を課しています。

単独利用では、線内での割引は適用されません。JR線への連絡運輸が絡んだ100km超えの経路に対して、例外的に割引が適用されると考えるとよいでしょう(連絡運輸設定範囲内に限る)。

由利高原鉄道

由利高原鉄道においては、手帳の種別にかかわらず線内全区間で割引が適用されます。JR線との連絡運輸は廃止されたため、手帳割引は線内完結です。

山形県

山形県内においては、山形鉄道の1社が手帳割引を実施しています。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
15山形県山形鉄道制限なしなし 

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

山形鉄道

山形鉄道線においては、手帳種別や単独利用に対して制限なく、線内全区間で割引が適用されています。難しい条件を考える必要はありません。JR線との連絡運輸に関しては、JR各社と同様の制限が適用されます。

福島県

福島県内には、鉄軌道事業者が3社あります。阿武隈鉄道、会津鉄道および福島交通(飯坂電車)が手帳による運賃割引の対象です。

通番都道府県事業者名(愛称)付添人同伴(第一種)単独(第一種・第二種)単独距離制限障害者用カード備考
16福島県阿武隈急行制限なしなし連絡運輸も割引対象(JR線:100km超)
17福島県会津鉄道制限なしなし連絡運輸も割引対象(野岩:距離制限なし・JR線と東武:100km超)
18福島県福島交通(飯坂電車)制限なしなし 

(割引状況の見方)●:適用 | 〇:条件付きで適用 | ×:不適用

阿武隈急行

阿武隈急行線においては、手帳の等級や介護人・付添人同伴といった条件なしに線内全区間の割引が実施されています。JR線への連絡運輸に関しても、単独では100km超えの要件を満たす経路で割引の対象です(連絡運輸設定範囲内に限る)。

会津鉄道

会津鉄道においては、線内全区間の割引に加え、他社連絡となる経路についても一定の条件下で行われています。

会津鉄道線内全区間と、会津鉄道と一体的に運営されている野岩鉄道への連絡については、距離制限はありません。東武鉄道線とJR線への連絡経路に関してはJR基準が適用され、単独利用の場合に100km超えの距離制限を受けます(連絡運輸設定範囲内に限る)。

福島交通(飯坂電車)

福島交通(飯坂電車)においては、手帳を提示すれば線内全区間の運賃割引を受けることが可能です。他社線への連絡運輸は現在行われていないため、線内のみの割引です。

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手帳による割引は所定運賃からの割引が基本

これまでお話ししてきた各鉄軌道事業者における運賃割引制度は、所定運賃からの割引が基本です。つまり、ネット限定割引きっぷやフリーきっぷといった特別企画乗車券に関しては、いずれの事業者においても割引の対象外です。

一定期間内における乗車回数が多くなる場合、個別に手帳割引を適用するよりも企画券を購入する方が総額が安くなる傾向があります。あらかじめ乗車回数を想定して、手帳割引を利用するかどうかを考えておくとよいでしょう。

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まとめ

北海道や東北地方においては、JR北海道やJR東日本ばかりでなく、ほとんどの鉄軌道事業者において精神障害者保健福祉手帳所持者に対する運賃の割引制度が実施されています。

北海道内においては、精神障害者保健福祉手帳に対する渋さが顕著です。

札幌市交通局や周辺のバス会社で利用できる「SAPICA(サピカ)」は現在、身体障害者手帳および療育手帳所持者のみが対象となっており、あいにく精神手帳では利用できません。また、函館市電においても、精神手帳は割引対象外です。

東北地方においては、精神障害者保健福祉手帳所持者への運賃割引制度がほぼ完備しています。

その中でも仙台市交通局は手帳割引に寛容で、市外在住者であっても仙台地域版交通系ICカード「icsca(イクスカ)」の利用が可能です。

仙台空港鉄道と秋田内陸縦貫鉄道を除き、単独利用でも全区間距離制限なしで運賃の割引を受けられます。

日常生活や社会生活に不可欠な手帳割引が実施されていることに感謝し、有効に活用したいところです。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料

● 各鉄軌道事業者のウェブサイト 2026.02閲覧

当記事の改訂履歴

2026年02月28日:当サイト初稿

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